協同組合と共済事業の発展をめざし、調査・研究、教育・研修、広報・出版活動のほか、共済相談所として苦情・紛争解決支援業務を行っています。
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Web 共済と保険2025年12月号

“協同”がよりよい世界を築く~連続シンポジウム・座談会

防災・減災・生活再建と地域づくりへの貢献
事例報告4 JA共済連

主催:2025国際協同組合年全国実行委員会

 2025年7月14日、主婦会館プラザエフにおいて、"協同"がよりよい世界を築く~連続シンポジウム・座談会 第5回が開催されました。テーマは「防災・減災・生活再建と地域づくりへの貢献」です。本稿では、本シンポジウムで発表された事例報告を前号(11月号)に続いて紹介します。
 今号では、こくみん共済 coop(事例報告3)、JA共済連(事例報告4)の事例報告をお届けします。           ※ 事例報告3はこちらから

【事例報告4】
JA共済における大規模自然災害への対応について

JA共済連 常務理事 深井 裕 氏

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 JA共済における大規模自然災害への対応について紹介します。
 JA共済は、「一人は万人のために、万人は一人のために」という、人びとが助け合い、支え合って生きていける社会の実現を目指す「相互扶助」の理念のもとに、農協の共済事業として誕生した事業です。事業実施の主体である地域のJA(農業協同組合)は、経済事業や信用事業など様々な事業を総合的に行っており、その中の一つが共済事業です。共済事業は、私たちJA共済連と地域のJAが一体となって取り組みを進めています。
 JA共済連では、大規模な自然災害が発生した際、地域のJAにおいてJA職員が組合員・利用者の安否確認や被災した家屋等の損害確認を行い、契約者と連絡がとれた場合にはその場で事故受付を行います。それを受け、JA共済連にて損害査定を実施し、共済金をお支払いするという流れになります。また、損害調査については、JAおよび連合会が一体となって行っています。被災された方々の生活再建のためには、一日でも早く共済金をお届けすることが求められます。そのために、①デジタルを駆使して迅速に損害調査を行うこと、②全国からの調査支援体制を構築すること、に取り組んでいます。
 その実例を紹介しますと、損害調査員はタブレット端末を活用し、被災現場で損害箇所を撮影することで、損害調査を短時間で完了できるようになっています。かつては、紙に手書きで損害情報を記録し、カメラで損害箇所を撮影し、フィルムを現像するといった工程があり、その当時は非常に時間がかかりました。

【タブレット型端末(Lablet's)と専用アプリを使った損害調査】

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 能登半島地震では、非常に多くの方が避難されており、被災された方の立ち合いのもとで行う損害調査を実施できない状況でした。そのため、人工衛星の写真で家屋の倒壊地域を確認することで、全損被害とする被災エリアを認定し、それを地図システムとJA共済の契約者情報をマッチングさせることで、立ち合いによる損害調査を行わず、請求をいただければすぐに共済金をお支払いできるようにしました。
 また、体制面については、被災地での損害査定に全国から延べ1,230名の職員を動員するとともに、共済金支払いのためのシステム入力などのバックオフィス業務に444人を動員して、迅速な対応を進めてきました。

【地図システムの活用イメージ】

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【人工衛星技術等の活用イメージ】

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 このようにして能登半島地震では、123,011件、1,518億円の共済金をお支払いすることができ、少しでも被災者のお役に立てたのではないかと思っています。迅速に損害調査できた一方で、「連絡が取れない方が多くいた」という課題が残りました。これを受けて、多くの被災者が金沢に避難しているという実態を踏まえ、急遽、金沢に受付窓口を設置しました。
 「被災して連絡が取れない方をなくす」という目標に向けて、スマートフォンアプリ『JA共済アプリ』から連絡が取り合える仕組みを構築しています。このアプリでは、避難所をすぐに探せるほか、避難先から被災の事故登録が可能です。また、今後は、このアプリに防災訓練もできるような機能をとり入れたいと考えています。

 今後、備えなければいけない大規模災害として、南海トラフ地震があげられます。内閣府の発表によると20の県で最大震度6強以上、10の都県で最大10mの津波も発生することが想定されており、特に交通インフラの被害が大きいとされています。被災地では、私たちJA共済連も含めたJAグループ全体の職員や家族に被害が及ぶおそれがあるため、初動対応にかなりの時間を要するものと考えられます。これまでのように被災された県や地域に全国からの支援ができるとは限らないため、これまでとは異なる「特別な手続きの採用と業務実施体制の構築」、いままで「JA支店で行っていた事故受付をアプリ等で遠隔対応可能にする」など、これまでの業務フローを全て見直し、南海トラフ地震に特化した計画・マニュアルづくりを進めています。あわせて、平時には損害調査業務に携わっていない職員もいざという時に駆け付けて損害調査に対応できるよう、職員教育等の充実化に努めています。

【広域支援体制を想定した研修】

  • 大規模自然災害に備え、職員の損害調査・査定スキルの維持・向上を目的に毎年開催
  • 模擬建物や一人一台タブレット端末を用いた模擬損害調査の実施

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【実効性が高い教育プログラムの実施】

 ①被災地でマネジメントを行う統括者の育成に特化した研修会の開催

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 ②VR(バーチャルリアリティ)を活用した体験型の調査員養成研修会の実施

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 続いてJA共済の地域貢献活動について紹介します。災害支援と防災の取り組みとして、災害発生時には災害シートや災害キットなどの無償配布を行っています。また、「ザブトン教授の防災教室」という体験型学習プログラムを全国展開しています。これは、過去の地震データをもとに、地震のリアルな横揺れを再現できる装置「地震ザブトン」をイベント時などに貸出し、実際に揺れを体験することで防災意識を高める取り組みです。私も体験してみましたが、座っているのがやっとという状況で、実際の地震はこれに縦の揺れが加わるので、とても立ってはいられず、何もできない状況だということを体感し、改めて、事前の備えの重要さを認識しました。全国で展開していますので、皆様のお近くで機会がありましたら、ぜひ体験いただきたいと思っています。

【JA共済の地域貢献活動(災害支援・防災の取り組み)】

 ①災害シート・災害キットの無償配布

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 ②ザブトン教授の防災教室

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 最後に、JAグループはさまざまな事業を行っているため、大きな災害がひとたび起きた際には、それぞれの事業単位でも被災への取り組みや支援を行います。救援物資や募金の呼びかけ、ボランティアの派遣、農業支援、生活再建の資金面での援助などが例として挙げられます。熊本地震の際には、避難所へおにぎりの配送や地域住民へ炊き出しを提供するなど、JAと各連合会が一体となって支援活動を行いました。今後も、私ども連合会はO・K・Y(俺たちはこれからもやり続けます)の姿勢で取り組んでいきます!

"協同"がよりよい世界を築く~連続シンポジウム・座談会防災・減災・生活再建と地域づくりへの貢献 事例報告4主催:2025国際協同組合年全国実行委員会