2025年7月14日、主婦会館プラザエフにおいて、"協同"がよりよい世界を築く～連続シンポジウム・座談会 第5回が開催されました。テーマは「防災・減災・生活再建と地域づくりへの貢献」です。本稿では、本シンポジウムで発表された事例報告を前号（11月号）に続いて紹介します。
　今号では、こくみん共済 coop（事例報告3）、JA共済連（事例報告4）の事例報告をお届けします。　　　　　 　※ 事例報告4はこちらから

【事例報告３】
こくみん共済 coopにおける防災・減災の取り組み

こくみん共済 coop　常務執行役員 坂本 隆浩 氏
※役職は当時

　こくみん共済 coop の防災・減災の取り組みを紹介します。
　まず、はじめに私どもこくみん共済 coop は、けがや病気、火災や風水害、交通事故など、生命と損害の保障をトータルで提供する共済事業を行っています。当会の正式名称は全国労働者共済生活協同組合連合会（略称は全労済）であり、2019年から、より多くの人に親しまれるよう「こくみん共済 coop」という愛称を用いるようにしました。社会課題の解決を持続的に行っていくための当会の考え方は、理念である「みんなでたすけあい、豊かで安心できる社会づくり」の実現のため、収益の一部を社会に還元し、事業を通じた社会課題への取り組みを行うことで、持続的な取り組みにしていくことができる、というものです。組合員が事業を利用することで、社会課題の解決に参加し、実感につながる、そのような好循環を目指しています。

【たすけあいの輪をむすぶ取り組み】

　もしもの備えとして、自然災害等によって生活再建ができない無保障者をなくすための共済の普及を本業として行うとともに、防災・減災のための事前の備え、生活再建へのサポート、被災地の復興支援活動などの取り組みを行っています。
　当会の被災地復興支援の取り組みのひとつに、「みんなで被災地応援プロジェクト」があり、住宅の保障である「住まいる共済」のお見積りをいただくと、1件につき100円を被災地の復興支援活動を行うボランティア団体に寄付し、復旧・復興支援をサポートしています。さらに組合員に復興支援への参加を実感していただくために、ボランティア等の被災地での活動の実態などをフィードバックしています。この取り組みは、コープ共済連さんで取り扱いをいただいている「ＣＯ・ＯＰ火災共済」や、労働金庫さんで取り扱いをいただいている「ろうきんローン専用住まいる共済」についても、対象としています。2024年3月から11月までの寄付金の総額は13,081,900円となっています。

【みんなで被災地応援プロジェクト】

　つぎに、当会の「これからの防災・減災プロジェクト」について紹介します。これまでの災害の教訓や経験を、さらなる防災・減災の普及やセーフティーネットづくりにつなげるために、東日本大震災から10年を経過した2021年3月から、これまでの防災・減災活動をさらに発展させて取り組んでいるものです。その取り組みの一つは内閣府が推奨している「ぼうさいカフェ」の展開です。2008年2月から、全国各地で展開し約700回開催をしています。また、当会では、職員が地域における防災活動の担い手となるために、防災士の資格取得を推進しており、2025年5月末現在、役職員全体の約27％となる966人がこの資格を取得しています。
　そのほかには、当会の本部が所在する渋谷区と協定を締結して、都市防災を促進する取り組みを共同で展開しています。その一つが渋谷区民向けの防災イベントである「渋谷防災キャラバン」へのブースの出展で、日常の備えや災害発生時の行動の啓発などを行っています。

【全国各地での防災イベントの開催 ～ 「楽しくわかりやすく」をモットーに】

【防災キャラバンへの参加（2022年6月～）】

　防災・減災というと、「訓練をする」などのイメージがあると思います。当然、訓練は大切なことですが、多くの方々に災害への備えや行動を学んでいただくには、楽しみながら防災、減災を知ってもらうことが大切であり、産官学民による参加型の活動としてスタートさせたのが、「もしもプロジェクト」です。そのコンセプトは、「自分で何とかできる人」の最大化が大きなゴールです。これまでは防災等の知識がなく、災害が発生した時に何をすれば良いのか分からず、結果として「助けられている人」が、防災の知識を学ぶことにより「自分で何とかできる人」に、そしてさらには「助ける人」になっていくことを目指している活動です

【もしもプロジェクト（2021年3月～）】

　2021年に渋谷への来街者へのアクションから始め、2022年には第1回の「もしもフェス渋谷2022」を代々木公園で開催しました。この開催には、JA共済連、日本生活協同組合連合会、コープ共済連にもご協賛いただきました。第2回の「もしもフェス渋谷2023」は、関東大震災から100年となる年で、多くの企業に協力をいただき、様々なコラボも実現できました。翌年の2024年は台風が接近していたことから中止になりましたが、2025年は8月30日から31日にかけて、代々木公園で開催します。
　この取り組みは渋谷だけにとどまらず、名古屋、大阪などでも展開をしており、さらに多くの都市で展開していきたいと考えています。
「もしもフェス渋谷2025」

【「ＴＯＫＹＯ もしもＦＥＳ渋谷2023」　当日の様子】

　また、渋谷区のPTAと連携し、防災授業、避難所の開設、防災食体験など、保護者と児童が体験できる小学校での避難所お泊まり体験を実施しています。さらには渋谷への来街者や区民がお店で被災した際に、適切な行動を促し、情報提供ができるお店を増やすプロジェクト、安全を提供できるお店を「守る」と「ミシュラン」を掛け合わせて、「マモリシュラン」として認定する取り組みを行っています。

【小学校での避難所お泊まり体験】

【安全を提供できるお店を「マモリシュラン」として認定】
店舗スタッフ等が地震発生時の対応やお客様の避難誘導などを学べるＷＥＢ検定としてスタート

　これからも、防災・減災は産官学民が連携し、総力戦での取り組みが極めて重要だと考えています。様々な取り組みを通じて得たノウハウを活かし、ネットワークづくりによって安心安全なまちづくりに貢献をしていきたいと思っています。