Web 共済と保険2025年11月号
防災・減災・生活再建と地域づくりへの貢献
事例報告1 生活協同組合コープいしかわ
2025年7月14日、主婦会館プラザエフにおいて、"協同"がよりよい世界を築く~連続シンポジウム・座談会 第5回が開催されました。テーマは「防災・減災・生活再建と地域づくりへの貢献」です。本稿では、今号と次号(12月号)において、本シンポジウムで発表された事例報告を紹介します。
今号では、生活協同組合コープいしかわ(事例報告1)、コープ共済連(事例報告2)の事例報告をお届けします。 ※ 事例報告2はこちらから
【事例報告1】
令和6年能登半島地震・奥能登豪雨災害対応報告
~全国の生協の「つながる力」を基にコープいしかわが取り組んだこと~
生活協同組合コープいしかわ
執行役員・能登復興推進室マネジャー 佐々木 智一 氏
能登半島地震、そして奥能登豪雨では、全国の生協の皆さん、各協同組合の皆さんからたくさんのご支援をいただきました。被災地に住む一人として、感謝申し上げます。
能登半島地震の発生からこれまでのコープいしかわの災害対応についてご報告いたします。
私たちが暮らす石川県は縦に細長い県で、車で能登半島へ行くには、のと里山海道と国道249号を通るしかない地域です。このため、地震が発生した2024年1月1日以降、道路が寸断され、被災地に物資が届かないといった状況が続きました。
【能登半島地震 発災当時の様子】
出典:石川県ホームページ
地震が発生した当日、コープいしかわでは災害対策本部を設置し、役職員の安否確認をしたところ、能登在住の職員の多くが被災し、残念ながら2名の職員が亡くなりました。被害が甚大なため、日本生活協同組合連合会(日本生協連)の職員も災害対策本部に常駐して支援をいただいています。同月22日に石川県生活協同組合連合会(石川生協連)の事務所に設置されたコープ被災地支援センターにおいて、全国の生協と一緒に実施する支援の窓口や情報発信の場を設置し、現在も取り組みを進めています。全国の生活協同組合(以下、「生協」)より700名以上の役職員から寄せられたあたたかい支援は私たちの「勇気」、「元気」、「笑顔」に繋がっていると思います。
人道支援以外には、東京のコープデリ連合会が昨年に引き続き今年も職員を派遣いただいており、コープこうべの組合員から寄せられた募金を基に、キッチンカーを導入して炊き出し等に活用しています。 全国の生協の皆様による募金は22億円を超え、義援金として石川県にも寄贈しました。また、義援金以外にも全国から寄せられた募金を活用してコープいしかわのボランティアバスの運行や、ピースコンサートのほか、被災地域の組合員を招待する食育活動や収穫体験などを実施しています。コープいしかわでは、ボランティアバスを毎月運行して、被災地での炊き出しやサロン活動を行っています。 その他にも多くの団体が被災地支援活動を行っており、そういった団体への支援も大切な活動のひとつです。全国から寄せられた募金を活用して、10団体に対し合計約300万円の助成を行いました。
【全国の生協のつながる力が結集】
続いて事業継続と地域の再建に向けてです。2024年1月6日から全国の生協からの支援のもと、電話による組合員の安否確認を行いました。能登北部センター管内の奥能登の2市2町(輪島市、珠洲市、能登町、穴水町)では、電話の不通率は48.6%と約半数を占め、留守も21.8%と、7割の組合員と連絡がつかず、多くの方々が地元を離れて避難されている状況を確認しました。電話のみでの組合員の安否確認では、被災地支援や事業再開が不十分なため、組合員宅を訪問活動して安否を確認し、事業再開に向けて順次対応を行っています。 こうした対応から、能登地域では発災からの一年間で約1,000名が生協の組合員になりました。新たに加入いただいた方にも買い物で不便がないように商品を宅配しています。奥能登2市2町での利用状況ですが、比較的被害の小さかった穴水町と能登町は、利用率が発災前とほぼ同じ水準に戻ってきましたが、被害が大きかった輪島市と珠洲市は8割程度の利用状況で、住民が金沢などの避難先から戻られていないことがわかりました。こうした状況を踏まえながら、支援活動を続けています。
【事業継続と地域の生活再建に向けて】
また、コープいしかわは、自治体や他団体と連携した支援活動を展開しています。具体的には、石川県内の全市町村と災害時支援協定を結び、地震発生後、多くの自治体からの支援要請を受けて物資の配送を行っています。珠洲市では、自衛隊が担っていた集積場から避難所までの物資の運搬を支援しました。自衛隊によると、これは全国で初めてのケースだそうです。
その他、仮設住宅に入居する方に、一日でも早く日常生活に戻っていただこうと、袋詰めした調味料セットを届けていますが、障がいの有無に関係なく、コープいしかわ全体で被災地を支援していきたいという想いから、この袋詰めの作業は、障がい者を雇用している「ハートコープいしかわ」というコープいしかわのグループ会社に作業をお願いしました。
【自治体や他団体と連携した支援活動】
災害ボランティアセンターの運営でも、全国の生協職員の応援を得て、ボランティアセンターの運営支援を行いました。日本ユニセフ協会や金沢大学などと連携したテントの寄贈活動や、「みんなの読み聞かせ絵本大賞」実行委員会と連携して、被災地域の幼稚園、保育園へ絵本を届ける活動に取り組んでいます。

全国の生協職員と共に災害ボランティアセンター支援に取り組む様子
被災地への支援を通して実感していることは、協同組合で大切にされている「たすけあい」の想いは、被災地で確実に広がり、共感を得ているということです。他県の生協や他の協同組合が被災地域で、団体の垣根を越えた地域に根差した取り組みは大切だと感じています。また、被災地は「つながり」の場を求めています。 被災地での報道が減ることにより、忘れられてしまうことを恐れており、情報発信や、被災地に行くこと、被災地の商品を買って支えること、そして、たとえ被災地域に行けなくても、その地域に思いを馳せることが非常に大切だと思っております。
最後に「CO・OP のとnote」を紹介します。コープいしかわではSNS「CO・OP のとnote」を立ち上げ、生協内外に全国の生協と、コープいしかわの取り組みを発信しています。これからも情報を発信して、被災地支援に取り組んでいきますので、皆様のご支援をお願いします。
【CO・OP のとnote (SNS)を立ち上げ、生協内外に情報を発信】
~次号(12月号)では、こくみん共済 coop 、JA共済連の事例報告をお届けします~









