協同組合と共済事業の発展をめざし、調査・研究、教育・研修、広報・出版活動のほか、共済相談所として苦情・紛争解決支援業務を行っています。
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Web 共済と保険2025年11月号

“協同”がよりよい世界を築く~連続シンポジウム・座談会

防災・減災・生活再建と地域づくりへの貢献
事例報告2 コープ共済連

主催:2025国際協同組合年全国実行委員会

 2025年7月14日、主婦会館プラザエフにおいて、"協同"がよりよい世界を築く~連続シンポジウム・座談会 第5回が開催されました。テーマは「防災・減災・生活再建と地域づくりへの貢献」です。本稿では、今号と次号(12月号)において、本シンポジウムで発表された事例報告を紹介します。
 今号では、生活協同組合コープいしかわ(事例報告1)、コープ共済連(事例報告2)の事例報告をお届けします。 ※ 事例報告1はこちらから

【事例報告2】
災害時の生協の役割と被災地支援の取り組み

コープ共済連 常務執行役員 前田 かおり 氏

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 私は、2022年1月21日から2024年3月20日まで日本生活協同組合連合会(以下、「日本生協連」)に出向していました。今日は震災時の能登の状況も踏まえながら、コープ共済連の取り組みを報告します。
 コープ共済連による被災地の組合員支援は、1991年に島原の雲仙普賢岳の大火砕流が発生した際、医療・生命系の保障では災害被害のお役に立つことができない、でも「何とかして、少額でもお見舞いの気持ちを届けられないか」という思いから、「異常災害見舞金制度」を創設しました。

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 金額は、一部壊で1万円、全壊でも5万円と少額ですが、全国の組合員からのお見舞いの気持ちをお届けするというものです。これまで、阪神淡路大震災(1995年)、東日本大震災(2011)、熊本地震(2016)などでもお見舞いの気持ちをお届けし、能登半島地震でも取り組んでいます。2024年1月1日の地震発生後、被災地に入れない、現地の様子がわからないという状況のなか、全国の35の生協と共に、契約者訪問活動を実施し、お見舞いの気持ちをお届けしてきました。
 この時も、全国の生協から「いつでも行くからコーディネートしてください」といった声が常に寄せられ、生協のたすけあいの力を実感しました。被災された組合員からは「CO・OP共済の『たすけあい』に災害の保障はないと思っていたのに、わざわざ来てくれて、お見舞金もその場でいただけた」と、感謝の声をいただきました。また、能登半島地震からは、タブレットを活用して、その場で手続きしてお見舞金をお届けできるようになりました。これは、DXにより実現できたもので、事務局側にとっても迅速な事後処理につながりました。

【CO・OP共済の契約者訪問活動と組合員の声】

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 日本生協連を中心とした全国での力強い募金活動により、全国228の生協から22億円を超える募金が、あっという間に集まりました。全国の組合員一人ひとりのお心遣いに感謝するとともに、全国で(「たすけあい」の声が)こだまして結集したものと思っています。2024年10月からは、能登の豪雨災害への支援も始めました。 募金は、被災県への義援金やボランティア団体等への支援金として使わせていただいています。
 全国の生協職員によるボランティアセンターへの支援として、能登町に全国の26生協から121人、穴水町に20生協から70人、輪島市に25生協から51人がそれぞれ派遣されています。全国から駆け付けた生協職員が、金沢市ではコープいしかわのトラック配送を担当し、奥能登ではコープいしかわの職員が運転するトラックに同乗して訪問するといった活動を行っています。
 組合員、住民の方からは、「3月まで何もやる気が起きなかったけれど、やっと片付けようと思えるようになったのよ」、「避難所ではホームシックになって泣いてすごしていたの」といった声を現場の職員と一緒に受け止めてきたことが大切だと感じています。ボランティアセンターへの飲料やお菓子の提供のほか、仮設住宅に住む被災者が支援物資を受け取ってすぐに料理ができるようにと調味料セットを届けているのですが、そのお届けする方法は、メッセージを添えた置き配達とすることにこだわりました。被災者の方は支援を受けるたびに「ありがとう」と言うことがつらくなる、「ありがとう疲れ」も言われていることから、そっと置いておくことにしました。本当の意味で「被災者に寄り添う」には、こうした配慮も必要だと感じています。

【仮設住宅への「調味料セット」のお届けと「受けとった方からの声」】

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 取引先の事業が立ち行かなくなるとその後の再建が本当に難しくなりますので、北陸応援企画として、コープいしかわの組合員向けに、ボランティアバスを運行し、「買い支え」による取引先の応援にも取り組んでいます。

【「買い支え」による取引先の応援】

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 災害時における生協の役割は、1995年1月17日の阪神淡路大震災のとき、「被災地に生協あり」という新聞記事があったように、被災地神戸に全国の人が駆けつけ、車体の柄が異なるトラックが被災地のあちらこちらに到着していた光景は、メディアを含め、本当に全国の力を最も感じた瞬間ではないかと思っています。神戸での経験が、その後の東日本大震災、熊本地震に引き継がれてきました。震災当時、神戸では店長の判断で店舗を開けて被災者支援を行ったことを、宮城や岩手の店舗でも同じようにやってきました。歯磨きをしないと口腔のケアが十分ではないため、組合員の体調が悪くなったという経験から、歯磨きセットを調達して被災地に送り届けるなど、「つながり」は生協の強みの一つだと思います。

【被災地に生協あり】

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▲1995年2月6日の東京新聞

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 今後の災害対応に向けて検証し、課題の洗い出しをする必要があります。
 みやぎ生協の方からは「東日本大震災を経験した職員が少なくなっている」とのお話を聞き、当時の経験を語り継がなければならないと思いました。多彩な協同組合があり、協同組合間連携により多様な支援ができると思いますので、これをもっと深めていきたいです。
 また、私たちは消費者組合ですから、経験を学習し、事前に備えるライプランニング活動に取り組んでいますが、防災・減災についてももっと学ぶ必要があると思っています。防災に関わるライフプラン・アドバイザー(LPA)の活動実績もコープ共済連のホームページに掲載しておりますので、ぜひご覧ください。これからも事業と活動の両方を通して、災害時の支援、防災の活動に取り組んでいきたいと思います。

~次号(12月号)では、こくみん共済 coop 、JA共済連の事例報告をお届けします~

"協同"がよりよい世界を築く~連続シンポジウム・座談会防災・減災・生活再建と地域づくりへの貢献 事例報告2コープ共済連主催:2025国際協同組合年全国実行委員会