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Web 共済と保険2026年5月号

「共済と保険」Web化記念企画(第5弾)

創立70周年を迎える生協全共連
代表理事理事長 林 浩一氏にインタビュー

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 「共済と保険」のWeb化を記念した特別企画として、2026年8月に誕生から70周年を迎える全国共済生活協同組合連合会(生協全共連)の代表理事理事長 林 浩一(はやし こういち)氏に当協会 専務理事 清 桂司(せい けいじ)が、①組織、②理念や大切にしていること、③事業運営において特に注力していること、④創立70周年を機に取り組んでいること、⑤持続可能な開発目標(SDGs)等への貢献に関する取り組み、⑥未来に向けた想いやメッセージについて2026年1月22日にインタビューをしました。(文責:編集室)

1.組織について

(清)生協全共連の組織概要や設立の経緯などについて教えてください。

(林)当連合会は、協同互助の精神に基づき、消費生活協同組合法に則り、次の事業を実施している生活協同組合の連合会組織です。

【事業概要】
1.会員の組合員の生活の共済を図る事業
2.会員の行う共済事業の再共済を行う事業
3.会員及びその組合員に対する共済事業に関する指導連絡及び調整に関する事業
4.会員の組合員及び職員並びに当連合会の職員の事業に関する知識の向上を図る事業
5.保険代理に関する事業
6.その他前記に付帯する事業

 当連合会は、全国に所在する14の共済生協が会員組合として所属していますが、主に火災共済再共済事業と交通災害共済再共済事業、火災共済事業を行っており、今年の8月で創立70周年を迎えます。会員組合の設立時期はそれぞれ異なりますが、所在する都道府県の認可を受けています。

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 戦後の復興期を経て、経済成長期に入ると都市化が進み、住宅が密集してきましたが、会員組合が誕生した1955年頃の当時は木造家屋が多く、人口の増加とともに火災も増える中、その当時の火災保険は掛金が高いということもあって「手頃な掛金で補償が受け取られる共済制度が必要ではないか」という地域の皆さんの声を受けて、地元の消防団などの消防関係者や地域行政が中心となり、各地で地域住民が互いに助け合う「火災共済事業」を行う団体を設立させました。

 当連合会の設立ですが、1956年2月に火災共済事業を展開していた地方自治体関連の生活協同組合の4組合が、共済事業の「一層の健全な育成を図るため、相寄り、協同の精神を以って、法令の遵守、基礎の強化を謀り、組合の準拠する非営利公益性を如実に具現して、弥が上にも、社会福祉の増進に貢献せんことを期する」ことを基本理念として、「全国共済生活協同組合連合会」の設立を呼びかけ、同年5月に当時の厚生省(現、厚生労働省)から認可を得て、同年8月に10の会員組合で構成する連合会組織をスタートさせました。

 途中、会員組合の増減はありましたが、現在は14の会員組合で構成し、組合員数は約132万人(2025年3月末現在)となっています。

全国共済生活協同組合連合会(生協全共連) 会員組合(14組合)
札幌市民共済生活協同組合
群馬県共済生活協同組合(高崎市)
横浜市民共済生活協同組合
愛知県共済生活協同組合(名古屋市)
大阪市民共済生活協同組合
西宮市民共済生活協同組合
姫路市民共済生活協同組合
新潟市火災共済生活協同組合
埼玉県勤労者生活協同組合(川口市)
金沢市民共済生活協同組合
名古屋市民火災共済生活協同組合
尼崎市民共済生活協同組合
神戸市民生活協同組合
福岡県民火災共済生活協同組合(福岡市)
※( )は主たる事務所の所在地

 設立当初は、監督官庁との連絡、共済事業や生活協同組合の事業運営に関する様々な情報収集と、会員組合間での共有、会員相互の情報交換と親睦を主な目的として活動を行っていました。また、当連合会の事務局は、理事長を選出した会員組合の事務所所在地に置いていたことから、最初は東京にありました。その後、1960年1月には神戸市に、1976年9月に名古屋市へと移転しましたが、1989年8月から大阪市に事務局を設置し、現在に至っています。

(清)生協全共連の組織像をご紹介いただきましたが、共済の種類や制度の成り立ち等について、お聞かせください。

(林)全焼火災など大きな損害が発生した場合、共済金の支払いが単独の会員組合の経営に及ぼす影響が大きくなるため、災害リスクを分散し、会員組合の経営の安定化を図るために1964年4月から火災共済再共済事業を開始しています。さらに、会員組合の組合員の多様な補償ニーズにも十分な対応ができますよう、当連合会を元受とする火災共済事業を1973年4月から実施しています。

 また、自動車交通が急成長期に入った昭和30年代(1955~1964年)から、交通事故の発生件数が激増し、それがピークとなる昭和40年代(1965~1974年)に入ると、会員組合でも交通災害共済事業を取り扱うようになりました。当連合会としても会員組合を支援していく必要性から交通災害共済の再共済事業を2000年7月から開始しました。

(図表1)再共済の仕組み
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 さらに、当連合会が団体契約者となり、共栄火災(株)の保険代理店として、会員組合の組合員を対象に、2011年には借家人賠償責任保険、2017年には類焼損害費用保険及び個人賠償責任保険を、会員組合のニーズに応えて順次導入しています。

(清)会員組合について、どのような組織なのか、特徴など教えていただけますか?

(林)会員組合の多くにおいては、戦後の復興が進み、火事が多かった時代に、地域の消防団などの消防組織が中心となって「火事を出さない」ための啓発活動に取り組んでいましたが、不幸にも火事に遭ってしまったらどうするのかといった課題に対して、なんとかして救済したいという考えのもとで、火災共済事業を開始しました。

 こうした背景から、防火と火事を出さないための啓発活動を共済事業とのセットで取り組むようになりました。会員組合の中には、消防団や地域の皆様の力を借りて、その役割を担っているところもあります。

 活動範囲は組合によって異なり、県民生協は広く県域を活動範囲としていますが、その他の各市民生協は、概ね所在する市域を中心に活動しています。

 大阪の組合は、消防団などが中心に活動している多くの会員組合と成り立ちが少し違っており、「大阪市赤十字奉仕団」が深く関わっています。赤十字奉仕団とは、1947年10月の「災害救助法」の制定に伴い、日本赤十字社が地域で災害救助を担う組織の結成を全国に呼びかけ、これに応じたことから誕生しました。

 大阪市では同年11月から市内各区に地域赤十字奉仕団が順次誕生し、1949年10月には全区の地域赤十字奉仕団の連合体としての大阪市赤十字奉仕団が結成され、災害救助や戦後復興などに大きな役割を果たしてきました。

 その大阪市赤十字奉仕団から、1961年当時、「大阪市にも手頃な掛金で加入できる共済制度の導入が必要ではないか」との要請がなされ、大阪市が主体となり、大阪市赤十字奉仕団の協力を得て、同年7月に大阪市民共済生活協同組合を設立しました。

 このように会員組合には規模の大小や成り立ちの違いはありますが、いずれの組合も地域に密着した活動に取り組んでいる地域生協です。

2.理念や大切にしていること

(清)生協全共連の歴史や役割について触れていただきましたが、事業の根幹となる基本理念や大切にしていることについて教えてください。

(林)我々の理念は、設立趣旨や設立目的のとおり、地域生協である会員組合と協同互助の精神を大切にしながら、組織の強化や事業の安定化を図り、それによって会員組合の組合員一人ひとりの生活の文化的経済的な改善と向上を図ることにあります。

【設立趣旨】
「一層の健全な育成を図るため、相寄り、協同の精神を以って、法令の遵守、基礎の強化を謀り、組合の準拠する非営利公益性を如実に具現して、弥が上にも、社会福祉の増進に貢献せんことを期する」
【設立目的】
「当連合会は、協同互助の精神に基づき、会員が協同してその事業の安定振興を図り、もってその組合員の生活の文化的経済的改善向上を図ること」

(林)会員組合は、その歴史や組織の規模、取り扱う商品の内容は様々ですが、いずれも火災共済を主力事業としています。
 当連合会は会員組合を支える立場であり、地域の特性も考慮しながら、会員組合や組合員の課題解決に努めることが求められます。

 会員組合の相共通する理念は、相互扶助を事業の原点に、暮らしの安心・安全の提供を通じて、組合員の生活を豊かにすることに努め、地域社会の安定と発展に寄与することにあります。当連合会は、すべての会員組合が共済生協としての使命と役割を果たせるよう、連合会の事業を通じて、会員組合との連携強化に努め、協同互助の精神をともに深めつつ、これからも共済という助け合いの輪を広げてまいりたいと考えています。

3.事業運営において、特に注力していること

(清)理念や大切にしていることの実践の場として事業があると思いますが、事業運営にあたり、課題と捉えていることをお聞かせください。

(林)わが国は急速な少子高齢化と人口減少が進む中、労働力不足や社会保障制度の持続性に対する不安、さらには地域社会の担い手の減少といった構造的な課題に直面しています。 
 また、景気の回復が見られるものの、国際情勢や通商環境の不安定化などを受けて、物価の上昇が家計を圧迫しており、将来への不安が拡大することも懸念されます。

 このような社会経済状況の変化は、私たちの生活全般にわたり影響を及ぼしており、相互扶助を基盤とする共済事業が担う役割と意義は、ますます大きくなっています。

 一方、会員組合を取り巻く環境は、組合員の高齢化に伴う解約や脱退、また同業他社との競合、さらには、気候変動に起因する自然災害の激甚化・頻発化に加えて、今後想定される大規模地震のリスクなどを背景に、契約件数等の減少傾向が続くなど、厳しさを増しています。

 こうした環境のもとで、共済事業を将来にわたり安定的に運営し、持続的に発展させていくことが大きな課題となっています。

 そのためには、火災共済再共済事業や火災共済事業をはじめとする各事業の適正かつ健全な事業運営を通じて「事業基盤の強化」を図るとともに、共済事業を支える人材の育成を通じて「組織基盤の充実」につなげていくことが重要であると考えています。

 また、共済は非営利を原則とし、相互扶助の精神のもと、手頃な掛金を提供するとともに、わかりやすい補償内容など、組合員本位の仕組みを大きな特長としています。

 各会員組合においては、これら共済の助け合いの精神や特性をよりわかりやすく、発信することなどにより、新規加入の促進などに取り組んでいるところですが、その成果を組織全体で共有し全体の底上げにつなげていくことも重要であると考えています。

 こうした考えのもと、当連合会では2025年度の事業計画において、①共済事業の進展、②教育事業の内容充実、③各種情報の交換・提供・管理等、④経営改善の推進、⑤法改正への対応等に関する取組み、の5つの柱を掲げております。

 これらはいずれも、組合員の暮らしを守り続けるための基盤づくりにほかなりません。私たちは、会員組合とともに課題を共有し、知恵を持ち寄り、組織としての総合力を高めながら、共済事業の持続的な発展に取り組んでいきたいと考えています。

(清)厳しい環境下において共済事業を持続的に発展させていくために、どのような対策をとられているのか、具体的に教えてください。

(林)一つ目として、「階層別研修会の開催」が挙げられます。人材育成は、組織と職員の成長を同時に実現する重要なプロセスの一つでありますから、研修環境の整備や充実が求められていることは言うまでもありません。

 しかしながら、各会員組合においては、組織の規模的な制約や経済的事情もあり、単独では研修会の実施が難しい状況もあるため、当連合会が階層別(役員、管理職、中堅・新任職員)にそれぞれの役割に応じて、社会の動向や法改正など時代や背景に沿ったもの、また実践に活用でき即戦力につながるようなものなど、組織運営や業務遂行に必要また参考となるようなテーマを設定し、それに即した知識やノウハウを有する専門家などに講師を依頼して、受講者の資質・技術の向上に努めています。

【会員組合向けの階層別研修体系】
①役員研修会...役員(理事・監事)を対象に年1回開催
(内容)共済事業の運営や共済事業に影響を与える課題等について講演
(最近のテーマ)「生協法の概要-理事として知っておくべきポイント」、「共済事業の現状とこれから」
②管理職研修会...管理職(課長職・係長職等)を対象に年1回開催
(内容)組織の目標を現場で実現する役割を担った管理職に対し目標達成に必要なスキルや指導力を習得する。
(最近のテーマ)「リーダー向けファシリテーション研修」、「時効と定型約款の変更について(予定)」
③実務担当者研修会...中堅職員・新任職員等を対象に年2回開催
(内容)コミュニケーション力などについて、グループワークやロールプレイングを通して実践的に学び、スキルを習得する。
(最近のテーマ)「コミュニケーション力向上研修」、「レジリエンス強化研修」

 そして、研修会修了後には情報交換会を開催し、会員組合間で相互に、日頃の悩みや課題解決のヒントが得られるような交流の場を設定しています。
 また、これら当連合会が主催する研修のほか、「会員組合企画研修会」への助成という制度を設けています。

 これは、会員組合が独自に企画する研修において、会員組合全体で共有することにより、会員組合がともに研鑽(けんさん)を積むうえでも効果的と思われるものについて、他の会員組合からも職員等が出張参加できるように、当連合会が当該研修に係る運営費用等のうち、必要となる旅費や宿泊費などの助成を行うという制度です。毎年、すべての会員組合に対して助成希望の有無について照会をしたうえで、内容審査を踏まえて対象となるものを決定していますが、最近では、2023年度に神戸で「「災害」発生時における対応と対策(BCP)とコミュニケーション」、2024年度には横浜で「カスタマーハラスメント防止研修」が開催されました。

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 二つ目は「ベストプラクティスの共有化」です。当連合会としては、今後も厳しい経営環境が見込まれるなかで、共済事業を持続的に発展させていくためには、個々の会員組合の取り組みにとどまらず、各会員組合において成果を上げている加入促進の成功事例など、いわゆるベストプラクティスについて、会員組合全体で共有することにより、会員組合相互の連携と学び合いを一層深め、組織としての底上げを図るとともに、その成果を、組合員にとってより良い共済事業の提供へとつなげていきたいと考えています。

 三つ目は、火災共済事業を実施する会員組合を対象とした「共済代理店指導・検査」です。
 当連合会は、生協法等関係法令や関連する諸規程等の遵守状況を確認するとともに、当連合会が委託する業務が正確かつ適切に履行されているかの点検を目的とし、年1回、当該会員組合を訪問して指導・検査を実施しています。

 当該会員組合に対しては、毎年、重点項目を設定するなどして、指導・検査を実施するとともに、あわせて、再発防止や日常業務の適正化を図るための「共済代理店検査基準表(チェックシート)」を提供することで、主体的・自立的に自己点検できるような体制整備支援も行っています。 
 これにより、改善点等が的確かつ迅速に把握でき、組合全体の業務レベルの向上に努めています。また、検査の実施とあわせて、会員組合の普及推進担当職員を対象とした共済募集人研修を実施しています。

 今後も効果的な手法があれば順次取り入れていきたいと考えています。

(清)新契約獲得に向けたキャンペーンなどの取り組みはありますか?

(林)当連合会としてキャンペーンを主催することはありませんが、地域の特性に応じた取り組みを後押しする仕組みを設けています。具体的には、会員組合が組合員向けに行う教育事業に対して、費用の一部を助成する制度があります。この制度を活用して、各会員組合では啓発媒体の作成などに取り組んでいます。

4.創立70周年を機に取り組んでいること

(清)今年8月に創立70周年を迎えられますが、これを機に特にお感じになっていることを教えてください。

(林)当連合会は、1956年に4組合による設立の呼びかけを契機として発足し、その後、社会・経済情勢の変化を背景に、会員組合の加盟・脱退などの経緯を経て、現在の14会員組合に至っています。その道のりは、決して容易なものではなく、とりわけ、2012年には、1年間に3会員組合が脱退するという重大な局面を迎え、組織として大きな試練に直面したことがありました。

 しかしながら、このような困難等を乗り越え、70周年を迎えることは、大変意義深いものであり、これまで、当連合会を支えてこられた歴代の役職員及び会員組合の皆様に深く敬意を表するとともに、日本共済協会をはじめとする関係団体の皆さまには、長年にわたり格別のご支援を賜りましたことに、心より感謝を申しあげます。

 昨年ノーベル賞を受賞した坂口志文氏が「一つ一つ」という姿勢を大切にしていましたが、私もそのとおりだと思っています。周年事業ということではなく、常に目の前のことを一つ一つ取り上げ、一歩一歩解決していくことが重要だと思っています。最近は大きな地震が頻発していることから、災害発生時には被災地の事業継続を支援するために他の地域が支援できるようなスキームを検討しているところです。

 そして、今後、当連合会が、80年、90年と将来にわたり持続的に事業を継続していくためには、まずは、健全な財務基盤の確保が重要であると認識しています。このため、火災共済再共済事業・火災共済事業においては、会員組合が安心して共済事業を継続できるよう、適切なリスク管理を行うとともに、責任準備金の確保をはじめ安定した事業継続に努めていく所存です。

 今後とも会員組合との連携を一層強固なものにするとともに、健全な財政基盤のもと、事業運営の効率化や適正な経費管理に取り組み、事業の安定性と透明性の確保に努めていき、引き続き、会員組合をはじめ関係団体の皆様から信頼される組織であり続けていきたいと考えています。

5.持続可能な開発目標(SDGs)等への貢献に関する取り組み

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(清)2030年を目標としているSDGs等を意識して取り組んでいることがあればお聞かせください。

(林)当連合会の会員組合は、創立以来、相互扶助(助け合い)の精神に基づき、ごく当たり前のこととして、地域に手頃な掛金で身近な共済事業を提供することを通じて、組合員の生活向上や、地域社会の安定と発展に取り組むことで、持続可能な地域社会の実現に努めてきました。

 そして、火災や事故などの生活上のリスクや不安に備える共済事業は、組合員の安心を支えるとともに、地域全体の暮らしの基盤を守る役割を果たしてきました。
 2025年は、国連が2012年に続き、2回目となる「国際協同組合年」に制定し、「協同組合はより良い世界を築く」をテーマに掲げ、協同組合がSDGs(持続可能な開発目標)の達成に貢献し得る重要な組織として、国際的に期待されていることが示されました。

 私たちが大切にしてきた相互扶助(助け合い)の精神、地域への貢献(防災への啓発活動や文化講座・各種相談会の実施など)、そして組合員の民主的な運営により生活向上と地域社会の安定・発展に寄与するといった共済生協としての使命と役割を果たすことは、SDGsが掲げる理念と重なり、その実現に直結するものだと考えています。

 当連合会はこれからも、会員組合と協同互助の精神を共にしつつ、より一層の連携を深め、共済という助け合いの輪を広げていくことで、持続可能でやさしい地域社会づくりに努めていきたいと考えています。

6.未来に向けた想いやメッセージ

(清)未来に向けた想いやメッセージをお聞かせください。

(林)私は、当連合会だけでなく、その会員組合の一つでもある大阪市民共済生活協同組合の理事長としても組織運営に携わっています。大阪市民共済も今年、創立65周年にあたるため、その観点もあわせてお話をさせていただきます。

 会員組合に相共通する経営理念は、繰り返しになりますが、相互扶助を事業の原点に、暮らしの安心・安全の提供を通じて、組合員の生活を豊かにすることに努め、地域社会の安定と発展に寄与することにあります。共済事業は組合員にとって、将来の不安に対する備えであることから、会員組合の使命と、果たすべき役割は大きく、安定した組合運営を維持継続させていくうえで、より強固な経営基盤の構築が求められることは言うまでもなく、当連合会の事業運営とも大いに関連するものでもあります。

 しかしながら、活動の範囲を市域や県域とする地域生協である会員組合にとって、この数年来、事業の根幹をなす共済掛金収入の減少傾向には依然として歯止めがかからず、その経営環境は一段と厳しい状況です。

 主な要因は、組合員の高齢化などに伴う解約や脱退であり、これが毎年のように数多く発生しています。また、同業他社(損害保険会社など)との競合の激化に加えて、近年多発し、その被害が甚大化している自然災害に対しては、主力である火災共済の補償の範囲には限界があると考えています。そして、火災保険や地震保険と比較すると、この課題がより鮮明となり、そのことが共済離れに拍車をかけている状況は否めません。

 会員組合としても、様々な工夫を凝らした取り組みを検討しながら加入促進等に努めていますが、このような経営環境のもとでは、一足飛びの増収は期待できず、持続可能な組合運営を目指した取り組みが一層求められています。

 大阪市民共済はお陰様で2026年に創立65周年を迎えます。基本的な取組方針をご紹介すると、共済契約においては、加入促進とあわせて、契約継続率の維持・向上に向けた取り組みを通して、共済掛金収入の減少幅の縮小に努めながら、受託・保険代理契約についても精力的な事業展開を推進させて、組合全体としての増収に努めています。さらに、可能な限り経費削減にも取り組んで、収支の改善を図ることとしています。

 また、より多くの組合員の多様なニーズにも応えるべく、新たな商品の導入・提供にも努めてきており、2025年度からは保険代理事業として新たに民間保険会社の生命保険事業の取り扱いを始めました。

 今後も、経営の安定化に努め、持続可能な組合運営を確立すべく、必要な取り組みを着実に推し進めてまいりたいと考えています。

(清)最後に、座右の銘を教えていただけますか?

(林)常に念頭に置いている特別なものはないものの、その意味するところに感銘を受けている言葉があります。中国の歴史書「三国志」の中に、「それ用兵の道は、人の和にあり」という言葉があり、諸葛孔明が伝えたとされるものです。「用兵」とは、戦いにおける兵力の使い方や戦いの進め方のこと、この場合における「人の和」とは、兵士たちの団結や士気ということになります。

 したがって、その意味は、戦いにおいて、勝敗を左右する最も重要な要素は、戦術の優劣や兵力が多い、少ないではなく、兵士たちの心が一つにまとまってさえいれば、本来の力以上のものが発揮でき、たとえ困難な状況にあっても力を合わせることで乗り越えることができるということです。逆に言えば、兵士たちの間に不和がある状態や、指導者に対して不信感を抱いた状況では、どれほど優れた戦術や強大な兵力を用いても、戦いには勝つことができないことを、諸葛孔明は常に念頭に置いていたといえます。

 諸葛孔明とは、中国・後漢末期の時代、群雄割拠の様相を呈し始めた頃から、魏・呉・蜀の三国が天下を統一すべく覇を競い合っていた頃にかけて、蜀の軍師として建国に大きく貢献し、また宰相としても治国に努めた人物です。天賦の才に恵まれた諸葛孔明であっても、常に兵士たちの心を掌握し、その団結力を強めることを重要視していたことが、この言葉からもわかります。

 つまり、「人の和」とは、互いの信頼や尊敬、さらには共通する目標への共感といった様々な要素が組み合わさって生まれるものであることから、現在の社会においても、組織運営やチームワークはもとより、風通しの良い職場環境など、多くの場面における人間関係の重要性を示唆する言葉として生き続けているものであり、これからも受け継がれていくものであろうと思われ、ご紹介させていただきました。

 生協全共連と大阪市民共済の理事長職に携わる私としては、この言葉を常に意識しつつ、日々の組織運営において「人の和」の実践に努めてまいりたいと思います。


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諸葛亮(孔明)181年~234年 蜀漢(三国時代)の丞相
「それ用兵の道は、人の和にあり」


■プロフィール

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生協全共連 代表理事理事長 林 浩一氏

1984年(昭和59年)、大阪市役所に入庁し、2021年(令和3年)に退職。その後、同年6月に大阪市民共済生活協同組合の代表理事理事長に就任。同年7月より現職。

【座右の銘】「それ用兵の道は、人の和にあり」

【事業概況】

生協全共連(全国共済生活協同組合連合会)

根拠法・所管 消費生活協同組合法・厚生労働省
設立 1956年(昭和31年)設立
事業内容 火災共済事業および火災共済・交通災害共済にかかる再共済事業
取扱共済 火災共済 / 火災再共済 / 交通再共済
事業規模 契約件数:609,372件 / 契約高:3兆1,956億円 / 受入掛金:8.2億円
特徴 地域住民に密着した共済事業をおこなっている団体が、全国的に連携し、共済事業の発展充実をめざしている。

資料:当協会発行「日本の共済事業-ファクトブック2025-」から作成。事業規模は生協全共連から提供。

創立70周年を迎える生協全共連代表理事理事長林浩一氏にインタビュー生協全共連代表理事理事長林浩一はやしこういち