協同組合と共済事業の発展をめざし、調査・研究、教育・研修、広報・出版活動のほか、共済相談所として苦情・紛争解決支援業務を行っています。
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Web 共済と保険2025年10月号

「共済と保険」Web化記念企画(第3弾)

創立65周年を迎えた日火連 恒川浩二会長に聞く

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 2025年4月に全日本火災共済協同組合連合会(日火連)は誕生から65周年を迎えました。
 これを記念して、会長の恒川 浩二氏に①組織について、②理念や大切にしていること、③創立65周年を機に取り組んでいること、④事業運営において特に注力していること、⑤国際協同組合年または持続可能な開発目標(SDGs)への貢献に関する取り組み、⑥未来に向けた想いやメッセージについて伺いました。(文責:編集室) 

1.組織について

(1)体制と規模

 私ども日火連は、中小企業等協同組合法(以下、「中協法」)に基づく組織です。また、全国各地に所在する41の協同組合が会員として日火連に所属しています。
 日火連は経済産業省、会員組合は所在する都道府県から認可を受けており、組合ごとの自主性を尊重しつつ、日火連と会員組合で連携して中小企業者向けに共済事業を行っています。
 具体的に実施している共済は、会員組合との共同元受事業である火災共済のほか、元受事業である自動車共済、医療総合保障共済、傷害総合保障共済、労働災害補償共済、休業対応応援共済、会員組合の元受事業である生命傷害共済、自動車事故費用共済、所得補償共済、休業補償共済、中小企業者総合賠償責任共済の再共済事業があります。
 共済契約の募集にあたっては、協同組合、商工会、商工会議所、商工組合等の中小企業者を支える各種組織が共済代理店(共済代理所)となっています。

(2) 創立から現在までの変遷

 中協法に基づく火災共済は、昭和32年の中協法改正により法制化され、それ以前に福利厚生事業として火災共済を実施していた事業協同組合は、この改正を機に「火災共済協同組合」へと組織変更しました。
 これら火災共済協同組合の多くはそれぞれ一つの都道府県を事業区域としており、組合単独では規模が小さく、十分なリスク分散ができないことから、全国規模の再共済組織として、日火連が昭和35年に設立されました。
 このような経緯で日火連は設立されましたが、当時の中協法では、火災共済協同組合は生命、傷害、医療などといった火災共済以外の共済を実施することができませんでした。
 そこで、火災共済協同組合と一体として運営され、火災共済以外の共済を実施する中小企業共済協同組合が各都道府県に相次いで設立され、その全国組織として全国中小企業共済協同組合連合会(以下、「旧・共済連」)が設立されました(設立時の名称は「全国中小企業生命傷害共済協同組合連合会」、昭和50年に改称)。
 日火連が火災共済を、旧・共済連が火災共済以外の共済を実施するという二つの組織体制となりました。その後、時代の変遷により、多様化する中小企業者のリスクを一つの組織で総合的にカバーするため、火災共済とその他の共済を同じ組織で実施できるよう、長年、中協法の改正を要望し続けてきましたが、なかなか受け入れられませんでした。それでも、各方面からの協力を得ながら、改正への取り組みを継続したことにより、平成26年に中協法の改正を成し遂げ、全ての共済を一つの組織で取り扱うことができる「総合共済化」が可能になりました。
 この改正により、日火連と旧・共済連は同年10月に合併し、各都道府県の火災共済協同組合と中小企業共済協同組合の多くが合併しました。
 以降、日火連は、火災共済をはじめとする計11種類の共済を展開し、中小企業者のあらゆるリスクに備える共済事業を行っています。

2.理念や大切にしていること

 私どもは「相互信頼・相互扶助」の理念を大切にしています。この理念は、中協法において定められており、日火連および会員組合にとって拠り所となるものです。
 中小企業者の皆さまは、規模が小さい故に、経済的に弱い立場となることもあるため、その弱みを互いに補完しあう相互信頼・相互扶助が非常に重要です。これは協同組合が、人と人とのつながりを中心とする人的結合体としての性格を持っているためです。
 また、組合員である中小企業者の皆さまのお声を大切にしています。以前、ご契約中の組合員の皆さまへアンケートを実施したところ、「中小企業者のための共済制度は今後も必要なものである」、「組合職員の対応・共済金の支払が迅速で非常に助かった」など、さまざまなありがたいお声をいただきました。これらのお声を励みに、今後も組合員である中小企業者の皆さまのニーズにお応えするため、また、信頼される共済団体として、日々、共済の普及推進に尽力しています。
 日火連は営利を目的とせず、組合員である中小企業者の皆さまが組合の事業である共済を利用することにより、自身の事業に役立てていくことを目的としています。
 日々の業務の中において、折に触れて協同組合の理念を振り返り、自分たちのアイデンティティを絶えず再確認することが重要だと考えます。

3.創立65周年を機に取り組んでいること

 日火連は創立以来、火災共済を事業の柱としてきました。長きにわたり組合員の皆さまをお支えし、また組合員の皆さまから信頼されてきた火災共済を今後も持続的に運営していくため、様々な取り組みを開始することとしました。
 火災や自然災害からの損害を補償する火災共済は、現在、厳しい運営を強いられています。
 建物の耐火性能が向上しつつあるとはいえ、ひとたび大きな火災が発生しますと、億単位の高額な共済金支払となることもあります。また、近年は気候変動の影響により、日本各地で大規模な森林火災や今までなかったような風・ひょう・雪等による自然災害も発生しています。例えば、台風の勢力が衰えずに北上するケースが増え、東北地方や北海道では以前よりも被害を受けやすくなったり、線状降水帯の影響により、予測が非常に難しく甚大な被害をもたらす大雨が発生したりするようになりました。
 過去に蓄積されてきた経験やデータなどが共済の制度設計の基礎にあるわけですが、現在はその前提条件が大きく変化してきています。
 このような状況にあることから、私どもの火災共済も、時代に合わせた改革を行っていかなければなりません。従来の事業運営を多角的に検証し、中小企業者の皆さまを末永くお支えできるよう、事業をより盤石なものとしていく所存です。

4.事業運営において特に注力していること

 私ども日火連は、事業運営において「適切な共済の募集」と「迅速な共済金のお支払い」の二点を最重要事項と考えています。
 共済の募集については、会員組合の職員および共済代理店が日々募集活動を行っています。会員組合の指導組織である日火連は会員組合に、また、会員組合は共済代理店に向けて、会議・研修会等により、コンプライアンス等についての教育・指導を定期的に行い、適切な共済の募集を行うためスキルアップを図っています。
 一方、共済金のお支払いについては、万一の被害・事故等の際、中小企業者の皆さまが一刻も早く事業の立て直しを図り、再開できるよう、迅速に対応する必要があります。
 私ども日火連は会員組合と連携し、迅速に共済金をお支払いできるよう日々努力しています。また、マニュアル等の整備や研修等の実施により、事故等の調査対応力の向上を図っています。

5.国際協同組合年または持続可能な開発目標(SDGs)への貢献に関する取り組み

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 現在、日火連で取り組んでいるDXの推進は、日常業務の効率化という意味合いもありますが、SDGsに貢献するという一面もあります。具体的には、日々の業務における紙の使用を削減することでSDGsの目標である「気候変動に具体的な対策を」や「陸の豊かさも守ろう」への取り組みにつながっています。
 また、私ども日火連が行っている共済事業がセーフティーネットとなることで、中小企業者の皆さまの事業に取り組む環境が向上することは、「働きがいも経済成長も」や「住み続けられるまちづくりを」を実現するための大前提となります。
 日々の業務における小さな改善の積み重ねはもとより、私どもが行っている協同組合の事業自体が、SDGsへの貢献となっています。
 国際協同組合年である今年は、私どもがこれまで取り組んできた、そしてこれからも継続していく事業の意義を再確認する契機として、非常に重要な年と考えています。

6.未来に向けた想いやメッセージ

 日火連が歩んできた65年間は、決して平坦な道のりではありませんでした。しかしながら、多くの組合員である中小企業者の皆さまに支えられ、また、諸先輩方がさまざまな課題を乗り越えてこられたことにより、現在の日火連があることに深く御礼申し上げます。
 今後も日火連および会員組合は、相互信頼・相互扶助の理念の下、共済事業を通じて、中小企業者の皆さまが災害・事故・病気などに遭われた際には、その事業の継続・再開の一助となることで、日本経済の活力の源泉である中小企業者の皆さまの未来に貢献してまいります。

【プロフィール】

全日本火災共済協同組合連合会(日火連) 会長 恒川 浩二 氏
平成19年5月に「東京都火災共済協同組合」の理事に就任。以後、同組合の常務理事、専務理事、理事長を歴任し、令和3年6月に「全日本火災共済協同組合連合会」の理事に就任。副会長を経て、令和6年6月より現職。

【事業概況】

全日本火災共済協同組合連合会(日火連)
根拠法・所管 中小企業等協同組合法・経済産業省
設  立 1960年(昭和35年)設立
2014年(平成26年)全国中小企業共済協同組合連合会を吸収合併
事業内容 会員と連帯しておこなう火災共済契約にかかる共済責任の負担
会員が共済事業をおこなうことによって負う共済責任の再共済
会員の組合員のためにする元受共済
取扱共済 ・火災共済 ・休業対応応援共済 ・自動車共済 ・医療総合保障共済 ・傷害総合保障共済 ・労働災害補償共済 ・生命傷害共済 ・自動車事故費用共済 ・所得補償共済 ・休業補償共済 ・中小企業者総合賠償責任共済
事業規模
(令和6年度実績)
火災共済事業収入共済掛金:106億2,952万円
その他共済事業の共済掛金:42億3,596万円
再共済事業の再共済料:4億2,636万円
特  徴 中小企業者が、火災などの不慮の災害に対する自衛措置として、互いに協力し合い、組織の力をもって解決をはかろうという、中小企業者の要望にもとづいて結成された共済協同組合の一つ。
募集活動は、協同組合、商工会、商工会議所、商工組合等の中小企業団体と代理所委託契約を結び、その組織を通じて組織的募集活動をおこなっている。
住宅、普通物件を補償対象とした「地震危険補償特約」を令和2年1月に新設し、「休業対応応援共済」の推進等、「補償」という観点から中小企業者等の事業継続支援に取り組んでいる。

資料:当協会発行「日本の共済事業-ファクトブック2024-」から作成。事業規模は日火連から提供。

本企画では今後も会員団体へのインタビューを通じて、共済団体の理念や取り組みを紹介していきます。

創立65周年を迎えた日火連 恒川浩二会長に聞く