Web 共済と保険2026年3月号
JA共済連のダイバーシティ&インクルージョンの取り組み(下)
本記事は、前号(2月号)に引き続きお届けしています。前号は、こちらからご覧ください。
2.具体的な課題と取り組み内容(2月号からの続き)
ここからは、D&I推進室D&I推進グループの菅原がD&I推進委員を中心とした職場づくりにかかる取り組みについて説明します。
人事部 D&I推進室 D&I推進グループ主幹 菅原 慎
(3)「職場づくりのための全会的な取組事項」の設定とD&I推進委員の任命
① D&I推進の着実な実行に向けて
令和6年度から展開した女性職員向けの「D・カレッジ」にて、育児・家庭と仕事との両立などにおける我々の組織・職場が抱える様々な課題が明らかになりました。
明らかになった様々な課題について、女性職員向けの「D・カレッジ」の参加者と常務理事で意見交換を実施し、令和7年度にJA共済連全体として取り組むべき「職場づくりのための全会的な取組事項」の検討を行いました。その結果、以下の2点について取り組んでいくこととなりました。
■令和7年度 職場づくりのための全会的な取組事項
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・各職場において、既存の業務プロセス見直しによる業務効率化を図り、仕事と家庭が両立できる職場づくりを実践する ・各職場において、職場文化・慣習を社会環境にあわせて見直しを行い、女性職員が自分らしく継続して働くことができる職場づくりを実践する |
これまで女性・若手の活躍、育児者支援、職場活性化...など様々なテーマでD&I推進にかかる取り組みを進めてきましたが、やや抽象的な内容が多かったことに課題を感じていました。この「職場づくりのための全会的な取組事項」の策定により、JA共済連全体として初めて、地に足の着いた具体的な内容が定まったと感じています。
このように、職員自身が抱えている課題や意見を「職場づくりのための全会的な取組事項」に繋げていくことで、まさに「D・カレッジ」のコンセプトである「職員自身が抱える課題を自ら解決していく枠組み」を示すことができたと実感しました。
② JA共済連の「今」を把握するための「職員実態調査」
「D・カレッジ」では様々な課題が明らかになりましたが、まだ顕在化していない課題・実態の把握や、よりよい組織にしていく必要な取り組みを確認するため、令和7年度には「職員実態調査」を実施しました。
「職員実態調査」は、「D・カレッジ」等で確認された課題を踏まえ、「女性職員向け」、「育児中の職員向け」、「若手職員向け」、「ベテラン職員向け」の4つのカテゴリーに分けて実施しました。
当調査では、「性別や年齢にかかわらず活躍し、育成される体制が整備されているか」、「仕事と育児を両立することついて、上司や同僚の理解があるか」等について確認を行いました。
正直なところ、性別や年齢等の属性に分けて調査を実施することに迷いはありましたが、調査結果をみると、職員の生の声が反映されており、属性ごとに課題や職員の考え方・価値観が様々であることが明らかになりました。当調査では特に女性や若手の職員から、多くの声が寄せられていることも見逃せません。
私は、調査結果で職員が抱える仕事と家庭等との両立の不自由さを目にしたとき、自分の認識がいかに不足していたかということを改めて実感しました。
人事部の職員として、育児・介護・病気治療等と仕事の両立に関する知識は持っていたつもりでしたし、JA共済連の休暇制度等は他企業と同じように整備され、職員に周知されていると理解していました。しかし、休暇制度等が職員にあまり知られていない、また、制度やその内容は知っていても実際にそれらの制度を活用できていない職員がいることが確認できました。育児や介護、病気治療等のために、職員が抱える仕事と家庭等との両立の不自由さや苦労は、私が理解していたものとは全く違うものだったのです。
私自身も「職員実態調査」で初めて実態を認識しましたが、理事や47都道府県本部の本部長もおそらく同じ印象を受けたと思います。ただ、私はこのタイミングで実態を知ることができてよかったと考えています。
また、「職員実態調査」では、前述のように仕事と家庭等との両立に悩んでいる職員がいるといった課題がわかった一方で、JA共済連の魅力についても改めて確認することができました。
例えば、育児中の職員は、「上長や同僚が仕事と育児を両立していることを理解し、サポートしてくれている」、若手職員は「上長が積極的に育成支援してくれている」と評価していることが明らかとなりました。また、「職員間のコミュニケーションが活発」と感じている職員もとても多い結果となりました。
当たり前のようなことですが、多くの職員がこのように上長や同僚に対して好印象を持っているという点は、まぎれもなくJA共済連の魅力であり強みでもあります。今後は、このようなJA共済連の魅力や強みを発信していくとともに、さらに強化していくことが必要だと考えています。
今回の調査では、さらに良い組織とするために、必要な解決すべき課題が可視化されたと前向きに捉えています。課題を一つひとつ改善することで、すべての職員が活き活きと働くことができる組織を目指すことができると考えています。

※ 各設問について『1:まったく当てはまらない』、『2:あまり当てはまらない』、『3:どちらともいえない』、『4:まあまあ当てはまる』、『5:とても当てはまる』の5段階で評価(一部自由記入欄あり)
③ 「D&I推進委員」主導の取り組みの展開
JA共済連は、県域を支える47都道府県本部と全国本部が一体となって事業を行っています。しかしながら、地域ごとに気候や農畜産物が異なるように、各本部における職場の課題や職員の声も様々であることを「D・カレッジ」や「職員実態調査」を通じて確認することができました。
異なる職場環境における課題や様々な職員の声に対応していくためには、「職場づくりのための全会的な取組事項」だけでは不十分であり、各職場の実態に応じた具体的な対策が必要だと考えています。そのため、各本部の副本部長をD&I推進委員に任命して、各本部で「職場づくりのための全会的な取組事項」の実践に紐づく具体的な「アクションプラン」を策定し、実践する枠組みを構築しました。この「アクションプラン」に基づき各本部にて取り組みを進めた結果、今年度実施したエンゲージメント・サーベイのスコアも向上し、少しずつではありますが、取り組みの効果が現われてきたように感じています。
次世代育成支援対策推進法に基づき、厚生労働大臣が従業員の子育て支援に積極的に取り組む企業・団体を認定する制度「くるみん」については、既に多くの企業・団体が認定を受けています。今年度はJA共済連も初めて認定を受けることができました。JA共済連のD&I推進はまだまだ道半ばですが、この認定は、私達の取り組みの「大きな一歩」であると考えています。

左から、D&I推進室の菅原、椎名、佐々木
3.今後に向けて ― 人事担当常務・人事部長・D&I推進室長による対談 ―
宮䑓(みやだい)常務理事(人事担当)、大平人事部長、川村D&I推進室長の3名が、今後のJA共済連におけるD&I推進について対談しましたので、その内容をお届けします。

(川村)私は入会以来、社会に情報を発信する広報業務や普及推進にかかる業務等を担当してきました。このような業務を担当する中で、一緒に働く仲間とは、相互扶助の精神のもと支えあってきました。令和6年度の人事部への着任時には、「働きやすい環境づくりを行うことで仲間をサポートし、JA共済連をさらに良い組織にしていこう!」と強く決意したことを覚えています。
実際にD&I推進の業務に携わる中で、結婚や出産を機に退職する職員や仕事と家庭の両立に悩んでいる職員がいることがわかり、特にそのような職員の力になりたいと感じました。
また、このような現状を理事や本部長をはじめとする役職員全員にも知ってほしいと思いました。
このため、現状や課題の見える化を図ることを目的として、「職員実態調査」や「エンゲージメント・サーベイ」等の業務から着手しました。令和4年度にD&I推進グループが設置されてからもうすぐ4年となりますが、これまでの取り組みにより、役職員にD&I推進にかかる課題が共有化されるとともに、社会と比較した場合の「組織の立ち位置」を把握するところまで進めることができたと感じています。ここからは、思いっきりアクセルを踏んで、JA共済連を前に前に進めていくことに全力を注ぎたいと思っています。
宮䑓常務は、人事担当常務としてどのような想いでD&I推進に取り組まれていますか?
人事部 D&I推進室 室長 川村 晃司
宮䑓 俊彦

(宮䑓)入会以来、情報システム部門を中心にキャリアを積み重ねてきました。令和6年度に人事担当常務を拝命しましたが、これまで人事部門や管理部門を担当したことがないこともあり、とても驚きました。
現在の人事部門は、職員採用、労務管理、人事制度改訂、給与厚生等の従来の人事業務に加えて、D&I推進にかかる業務など、業務の内容・幅が非常に多岐に渡ります。人事担当常務として、職員と真摯に向き合う必要性を強く感じながら取り組んでいます。
特にD&I推進にかかる業務については、外から見るのと実際に担当した後では、印象がガラッと変わりました。川村室長が言うとおり、取り組むべきこと、解決すべきことがとても多い印象です。
(川村)D&I推進という観点において、宮䑓常務が考える特に大切なポイントを教えてください。
(宮䑓)一言で言うと、「誰もが活き活きと働くことができる職場環境を整備し、多様な職員の活躍を後押しすること」でしょうか。JA共済連には、とても優秀な職員がたくさんいます。私自身も、これまでの業務の中で、先輩・後輩など、役職や性別を問わず、本当に多くの方に支えていただいたからこそ、今の自分があると感じています。
ただ、その中には、結婚や出産、介護、病気等の様々な事情で退職してしまう職員もいました。優秀な職員を失ってしまうことは大変残念なことです。これまで以上に、優秀な職員に長く働いてもらえる環境を整えていく必要があると考えています。
また、管理職になると、周囲の職員への影響力が増しますので、その分、言い過ぎてしまっていないか、逆に必要な発信や指示が足りているか等、意識すべきことが多くなります。管理職が適切な発信・指示を行い、周囲の職員と対話することにより、職員の心理的安全性を十分確保できるようにしていく必要があると考えています。
このようなD&I推進の取り組みにより、誰もが活き活きと働くことができる職場環境づくりを、さらに進めていきたいと考えています。
女性職員向けの「D・カレッジ」には、研修終了後の懇親会も含め、昨年度から毎回参加しています。
懇親会の場で、「悩んでいることがあればいつでも連絡をください」と伝えたところ、翌日、参加者からメールがありました。いただいたメールには、職場で様々な悩みを抱えながらも、日々農家・組合員、そしてJAのために業務に邁進してくれている内容が書かれていました。メールをいただいたことに嬉しさを感じる一方で、悩みを抱えながら頑張っている姿勢に、胸が熱くなりました。
このような職員の悩みを少しずつ解決していくためにも、D&I推進の取り組みは、非常に重要です。
(川村)ありがとうございます。職員の声を直接聞く機会は重要ですよね。本当に参考になりますね。
話は少し変わりますが、今年度は「職員実態調査」を実施しました。調査結果については、47都道府県本部ごとに集計してそれぞれ提供しました。調査結果を見ると、各本部でかなり差が生じていました。人事部としては、まずこの差を早急に埋める必要があると感じました。そのため、本部長や副本部長には、あえて他の本部の結果も示しました。これにより、自本部の立ち位置や課題を客観的に把握することできたのではないかと感じています。
宮䑓常務は調査結果を受けてどのように感じていますか?
(宮䑓)仕事と家庭の両立支援にかかる取り組みや理解が不足していること、若手職員の仕事へのやりがいに差が生じていること等、早急に解決すべき課題が多くあると感じました。理事や47都道府県本部の各本部長は、調査結果を踏まえて、このような課題を改善していく必要があると感じています。
組織全体として、全ての職員が健康で活き活きと働くことができる職場づくりに向けて、スピード感を持ってD&I推進にかかる取り組みをさらに推し進めたいと考えています。
人事部部長 大平 朋
(大平)D&I推進というと、一部職員への取り組みのように映ってしまいがちである点を懸念しています。
D&I推進の本質は、取り組みを通じた組織全体の組織力の強化であり、今年度策定した「ダイバーシティ&インクルージョン推進方針(D&I推進方針)」でも、「人づくり」と「環境づくり」が取り組みの両輪となっています。
「環境づくり」の取り組みの一環として取得を目指していた「くるみん」の認定を今年度受けることができました。「くるみん」の取得に向けては、特に「男女ともに育児休業等の取得率を100%とする」という行動計画の目標達成に苦慮しました。
D&I推進グループが設置された令和4年度時点では、男性職員の育児休業等の取得率の目標値は50%であり、実際の取得率も50%以下でした。それをあえて令和6年度に目標値を100%に引き上げ、同時に育児休業等の取得促進(職員への制度周知、取得状況の管理等)にかかる施策を展開しました。その結果、令和6年度末時点で、男女ともに育児休業等の取得率100%を達成することができました。
「くるみん」の取得により、JA共済連のD&I推進が一歩前に進みましたが、現在はさらに育児休業の取得日数の延伸を進め、「プラチナくるみん」の取得を目指し取り組んでいます。
年齢や性別、価値観の違い等にとらわれず互いを尊重しあうこと、職員の能力を最大限に発揮するための環境づくりを行うこと、これがまさにD&I推進の目的です。
この目的の達成のための職場づくり・体制整備を行っていきたいですね。
(宮䑓)改めて感じるのはD&I推進は"誰かのため"ではなく、"私たち全員のため"の取り組みだということです。結婚や出産、介護など、人生の節目で優秀な仲間が辞めてしまうのは本当に残念なことです。だからこそ、誰もが安心して長く働ける環境を整えることが必要です。
職員の声からは、悩みや不安が感じ取れます。それを受け止め、改善につなげることが、組織を強くする第一歩です。心理的安全性を確保し、お互いを尊重しながら、皆で知恵を出し合い、行動していくことが必要だと考えています。
JA共済連には素晴らしい仲間がいます。その力を最大限に発揮できる職場を、職員の皆さんと一緒に必ずつくっていきたいと思います。

4.今後の私たちの取り組み
令和4年度から始まったD&I推進の取り組みの成果として、組織全体や各本部の現状と課題を明らかにすることができました。そして今、JA共済連のD&I推進は次のステージに移ろうとしています。
数年前の「D&Iって何?」という状態から、現在では理事・管理職、そして職員の多くがD&I推進の必要性とさらに推進していくための課題を理解するというところまできました。
同時に、各種調査やD&I推進委員の活動を通じて、各本部には様々な取り組み事例やノウハウがあることを確認することができました。成功事例・優良事例は、積極的に他の本部にも共有をはかっていきたいと考えています。失敗した事例も、少し改善をはかることによって、成功事例へと変化するかもしれません。
私たちJA共済連は、47都道府県本部と全国本部が一体となって運営している組織となります。D&I推進の取り組みは、各本部のD&I推進委員を中心に、各本部と全国本部の役職員が一体となって、「全ての職員が自身の能力を最大限に発揮し、健康で活き活きと働くことができる職場づくり」を進めていきたいと考えています。

宮䑓常務理事と人事部のみなさん
