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Web 共済と保険2026年2月号

JA共済連のダイバーシティ&インクルージョンの取り組み(上)

JA共済連 人事部 D&I推進室 D&I推進グループ

1.はじめに

画像 人事部 D&I推進室 D&I推進グループ
課長 福谷 佳子

 私たちJA共済連(全国共済農業協同組合連合会)は、「相互扶助(助け合い)」を事業活動の原点として、ひと・いえ・くるま・農業の各分野における保障提供活動や地域貢献活動を通じて、組合員・利用者、農業従事者、地域住民の皆様が豊かで安心して暮らすことのできる地域社会づくりに取り組んでいます。
 昨今の急激な環境変化の中で、その環境変化に対応していくためには、"人づくり"と"環境づくり"を通じて、全ての職員が自身の能力を最大限に発揮でき、活き活きと働くことができる職場風土の醸成と環境づくりに取り組んでいくことが大切だと考えています。
 こうした考えのもとで推進している私たちJA共済連のダイバーシティ&インクルージョンの取り組みをご紹介します。

 はじめに、D&I推進室D&I推進グループの福谷がJA共済連の現状と取り組みについて説明します。

(1)JA共済連がD&I推進に取り組む理由

 近年、多くの企業・組織において「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)」にかかる取り組み(=D&I推進)が進められています。「D&I」とは「人々の多様性(Diversity)を受け入れ(Inclusion)、活かすこと」であり、これにより自由な発想が生まれ、生産性の向上や競争力の強化、組織の成長や活性化につながることから、組織の価値向上には欠かせないものだと考えられています。

 私たちJA共済連においても、年齢、性別、ライフスタイル等の属性にかかわらず、全ての職員が自身の能力を最大限に発揮し、活き活きと働くことができる職場づくりをめざして、D&I推進に取り組んでいます。

 今、社会は、男性と女性、セクシャルマイノリティであるLGBTQ当事者、若手からベテラン層、独身や既婚者、育児や介護をしながら働く従業員、短時間勤務の従業員等、実に様々な属性・背景を持った従業員が共に働く時代です。このような従業員の多様化、つまりは社会の変化への対応として、多様な人材がお互いを尊重し、その能力を発揮できる職場風土と環境を作っていくD&I推進が求められています。

 JA共済連におけるD&I推進は、このような世の中の流れに単純に乗っただけではありません。そもそもJA共済は、「相互扶助」を事業理念としており、職員同士も助け合いの理念や互いの信頼関係を大切にしながら事業を行ってきました。

 しかしながら、職種等(総合職や一般職等の区分)によっては、特に女性は結婚などのライフイベントを機に退職する職員が生じているなどの課題がありました。また、コロナ禍を契機に職員同士の交流機会の減少や、転職市場の活性化によって、退職者数が増加するなど、新たな課題が発生しました。
 このような状況に対応し、引き続きJA共済事業の使命を全うするためには、組織力強化が不可欠なことから、令和4年度に全国本部人事部にD&I推進グループを設置し、取り組みを進めることとなりました。

(2)令和7年度のD&I推進方針の策定

 ① 令和4年度から6年度における取り組み

 令和4年度にD&I推進グループが設置された当初は、白紙の状態からのスタートでした。全国本部内の職場から取り組みをスタートさせていきましたが、試行錯誤の連続でした。

 まずは、職員同士の座談会や理事と職員の座談会、ウォーキングイベント、男性育休取得促進のためのセミナーの開催など、職員が前向きな気持ちになれるような企画を展開しました。また、会内広報誌である「D・れた~」を発行し、これらの取り組みを伝えることで、職員に「新しいことを始めた」「職場が楽しい雰囲気になってきた」という実感を持ってもらえるような職場内の雰囲気づくりを行いました。
 全ての企画が手探り状態の中での実施となりましたが、「コロナ禍で減少した職員間のコミュニケーションを取り戻すこと」「男性職員の育休取得促進を行うこと」等、目の前にある課題を一つひとつ解決することで、D&I推進グループの取り組みを進めていきました。

 令和5年度からは、「いつでも・どこでも・身近な悩みの解決」をコンセプトにした研修動画「D・トレーニング」を公開し、また令和6年度からは、職員が抱える課題を自ら解決していくための枠組みである「D・カレッジ」をスタートさせました。
 令和4年度から6年度の3年間で、全国本部でトライ&エラーを繰り返し、効果のあった取り組みを全国本部から47都道府県本部へと順次展開することで、D&I推進の土台形成をはかりました。

■ D・れた~  ※画像をクリックして拡大
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 令和4年6月から全国本部内で発行をはじめ、毎月欠かさず発行しています。また、令和5年度からは47都道府県本部へも発信しています。職員を対象とした座談会や研修会、イベントの様子を伝えるとともに、D&I推進に関心をもってもらえるようなコラム欄を設けるなど、理解促進ツールとして各職場にも浸透してきました。

■ D・トレーニング  ※画像をクリックして拡大
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 全職員向け、管理者向け、ベテラン職員向けなど、職場におけるそれぞれの小さな「お悩み」を解決するコツを習得する動画を公開しています。
 お昼休み等のちょっとしたスキマ時間に視聴してもらえるように、1015分程度の短い構成にしています。

■ D・カレッジ
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 全国各本部で働く職員が集まり、互いに意見を出しあいながら、職員自身が自らの課題を解決していくための枠組みです。D・カレッジで明らかとなった課題を踏まえ、JA共済連全体で取り組むべき事項を検討しています。先行して女性職員向けのD・カレッジを展開し、現在は若手職員向け、管理職向け、47都道府県本部の本部長・副本部長向け等、階層範囲を広げています。

 ② ダイバーシティ&インクルージョン推進方針

 令和6年度までの取り組みの成果もあり、徐々にではありますがD&I推進の取り組みが会内に広がってきました。職員の理解が一定進んだということもあり、令和7年度には組織全体としてさらにD&I推進の取り組みを前に進めるため、「ダイバーシティ&インクルージョン推進方針(D&I推進方針)を策定しました。サステナビリティ推進方針の中の個別方針として位置付けたことにより、経営方針としてD&I推進に取り組むこととなりました。

 これは非常に大きな一歩となりました。まさに令和7年度は、JA共済連における「D&I推進元年」と言えると思います。これまでの3年間は、女性や育児者など、女性活躍推進法や次世代育成支援対策推進法等の法令への対応が中心となっていましたが、今後は「全ての職員が自身の能力を最大限に発揮できる職場をつくることにより組織力を強化する」という本来の目的をさらに前に進めていくための取り組みを実施したいと考えています。

■ サステナビリティ方針とD&I推進方針  ※画像をクリックして拡大
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2.具体的な課題と取り組み内容

(1)職員が自ら課題を解決していく枠組み「D・カレッジ」の展開
 ~女性職員の定着に向けた取り組み~

 ここからは、D&I推進室D&I推進グループの椎名が女性職員の定着に向けた取り組みについて説明します。

画像 人事部 D&I推進室 D&I推進グループ
調査役 椎名 ひとみ

 ① 多くの女性職員が長く働けるJA共済連へ

 私(椎名)は、JA共済の事業理念である「相互扶助」に共感し、「組合員・利用者の期待に応えたい」という思いからJA共済連に入会しました。平成28年度の入会以来、全国本部における生命共済の支払査定や愛知県本部におけるJAの事務指導等の業務、全国本部での採用担当業務等を経験し、自身の成長と業務の充実感を感じています。様々な業務の経験とやりがいから、「JA共済連で長く働きたい」という想いを強く抱いています。

 しかし、現在のD&I推進グループの業務に携わるようになり、結婚等のライフイベント等を機に退職する職員がいるという事実を知りました。私と同様にJA共済の事業理念に共感して入会した職員や、「JA共済だからこそ働きたい」と感じている職員が多くいる中で、非常に残念な気持ちになりました。
 このような職員の思いを実現するためにも、多くの女性職員が長く活躍できる組織にしたいと強く感じました。

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※男女共同参画局ホームページより

 個人的には、「女性活躍推進」という性別に焦点を当てた取り組みは、不公平感や逆差別にもつながりかねない側面もあると考えており、数値ばかりを追い求めるような対応には多少の抵抗を感じることがあるのも事実です。

 しかしながら男女共同参画局(内閣府)のデータでは、出産・育児・介護・看護などのライフイベントによる離職者の大半は女性であり、JA共済連においても結婚等のライフイベント等を機に退職する職員の多くは女性であるという課題があります。この課題を組織全体でしっかりと受け止め、女性職員が長く働くことができる組織へと改善する必要があると感じています。

 ② 女性職員向け「D・カレッジ」の立ち上げ

 「女性職員が離職する要因は何か?」
 「長く働き続けるためにはどうすればよいのか?」
 全国本部内で試行的に様々な職員アンケートやヒアリング、女性職員向けのセミナー等を実施しましたが、なかなか根本的な課題を把握することはできませんでした。

 他方で、JA共済連は、47都道府県本部と全国本部が一体となった事業運営を行っていますが、勤務地が全国各地に分散していることもあり、同じJA共済連の仲間であっても、なかなか顔を合わせる機会がないことから、女性職員同士の接点づくり・ネットワークづくりが必要だと考えました。
 そこで、全国各地で働く女性職員が集まり、互いに意見を出しあいながら、職員自身が自らの課題を解決していくための枠組みとして、「D・カレッジ」を企画しました。

 解決すべき様々な課題がありますが、まずは女性職員の定着を目指し、先行して女性職員向けの「D・カレッジ」を令和6年度にスタートしました。

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 女性職員向けの「D・カレッジ」は、2種類展開しています。職種や階層を問わず、女性職員同士の交流の場とし、ネットワークづくりを主眼においた「女性職員交流会」、中堅総合職女性のキャリア支援や先輩管理職との接点づくりを目的とした「女性職員キャリア支援講座」です。

 本部や部署によっては女性職員が少なかったり、本部間の交流が少ないといった状況があったことから、「女性職員交流会」は、女性同士の横のつながりを目的としています。普段なかなか関わることのできない本部間のネットワークづくりや、「さまざまな情報が散在しており、職員が情報を有効に活用できていない」「部門同士の交流がなく、連携して業務を進められない」といったサイロ化の抑制に向けた情報の共有化を行っています。

 一方、「女性職員キャリア支援講座」は、自身のキャリア形成を主眼においたプログラムとしています。令和7年度は「自分らしいリーダーシップを発揮する」ことをテーマに開催しました。「女性職員キャリア支援講座」では、先輩となる女性管理職のパネルディスカッションを設けることで、管理職となった場合のイメージやそれぞれの活躍の仕方などを考えるきっかけづくりを行いました。

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 ③ 女性職員向け「D・カレッジ」の意義

 女性職員向けの「D・カレッジ」の展開にあたっては、「なぜ女性活躍が必要なのか」「女性優遇に繋がるのでは」という意見や、「性別で区分しないでほしい」「働く上で性別は関係ない」というような様々な意見を多数いただきました。

 しかしながら、女性職員に長く安心して働いてもらうためには、女性職員が一堂に会することで互いの悩みや課題を共有する場が必要だと強く感じています。「D・カレッジ」により、他の本部で頑張って働く仲間や、活躍している女性管理職の存在を知ることができるようになりました。地道なやり方かもしれませんが、「D・カレッジ」の開催を通じて、一人でも多くの女性職員に「JA共済連で長く働くイメージ」を伝えたいと思っています。

■ D・カレッジの様子
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■ D・カレッジ参加者の声  ※画像をクリックして拡大
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(2)職員が自ら課題を解決していく枠組み「D・カレッジ」の展開
 ~若手職員の活躍に向けた取り組み~

 ここからは、D&I推進室D&I推進グループの佐々木が若手職員の活躍に向けた取り組みについて説明します。

画像 人事部 D&I推進室 D&I推進グループ
調査役 佐々木 亮輔

 ① 若手職員の現状

 平成27年度に入会して以来、全国本部や県本部の事業推進部門(県下JAを支援する業務)を中心に経験し、JA共済の保障を組合員・利用者にお届けするための施策を検討する業務に携わってきました。現場での経験を通じて、組合員・利用者に対して、「共済」を通じて「安心」を提供するというJA共済の意義ややりがいを実感してきた私にとって、令和5年度の人事部への異動は大きな転機となりました。
 人事部では、連合会職員向けの研修企画や運営、新入職員の入会式や研修の運営、そして職員向けのエンゲージメント・サーベイ(職員の仕事や組織への満足度・貢献意欲等を確認するための調査)等を担当しています。人事部での業務を通じて見えてきたのは、若手職員のモチベーションが、私が考えていたよりも低いという現状でした。

■ エンゲージメント・サーベイ結果(イメージ)  ※画像をクリックして拡大
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※上記の画面はサンプルです。

 ② 若手職員を元気に

 「後輩たちにもっと業務のやりがいをもって働いてほしい」という思いから、若手職員向けの「D・カレッジ」を企画しました。本来、「やりがい」は自らの中に見いだすものですが、そのきっかけとして、今各職員が取り組んでいる業務がどのような理念・使命のもとに実施されていて、理念・使命の実現にどのようにつながっているのか、改めて何のために働いているのかを認識してもらうことが必要ではないかと考えました。

 そこで、若手職員自身が「JA共済連で働く意義」や「組織や自身が大切にする価値」、「組織のあるべき姿」を主体的に考え、仲間と対話しながら深めていくことを目的にカリキュラムを設計しました。
 特に「理事との意見交換会」は、仲間と一緒に考えた「JA共済連のあるべき姿」や「あるべき姿に向かうために必要な取組み」について、理事に直接提案する貴重な機会となっています。
 普段はなかなか接点のない理事との対話は、若手職員にとって大きな刺激となり、「自分の声を組織に届けることができる」という実感を得ることができています。
 また、参加した理事からも、「若手職員の率直な声に触れることで、組織の未来を考えるうえでの新たな視点を得ることができた」「本会としても意見集約の受け皿を整えていきたい」等の発言もありました。
 双方向の対話を通じて、若手職員の中にあった漠然とした不安や疑問が、少しずつ言葉になり、組織とのつながりを実感する手応えへと変わっています。その変化の場に立ち会えることは、運営側としても大きなやりがいとなっています。

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 今後は、こうした心の変化や繋がりを一過性のものにせず、日々の業務の中で活かしていけるよう、さらに改善して取り組んでいきたいと考えています。若手職員が、自分らしく活き活きと働くことができる環境づくり―それは、JA共済連全体の活力を高めるためにも、欠かせない視点だと感じています。

~3月号では、D&I推進委員を中心とした職場づくりや今後に向けた取り組みについて説明します。~

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