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Web 共済と保険2026年7月号

率先して仕事がしたくなる魅力ある組織づくり
~「社内クラウドファンディング」を活用した事例~(下)

 本記事は、前号(6月号)に引き続きお届けしています。
 前号では、ニッセイ情報テクノロジー社における「社内クラウドファンディング」の仕組みについてお話をお聞きし、ご紹介しました(前号は、こちらからご覧ください)。
 今号は、実際の取り組み事例について、プロジェクトメンバーの方々にお話をお聞きしました。

2.社内クラファンの取り組み事例

 社内クラウドファンディング(以下、「社内クラファン」)では、どのような取り組みがされているのか、「OUR DESIGN」と「きんたいりんく」という2つのプロジェクトについて、メンバーにお話をお聞きしました。

【OUR DESIGN】 
(1)「OUR DESIGN」とはどのような取り組みですか?

 社内で「企画書や提案書などの内容にフィットしたデザイン性の高いイラストをインターネット上で見つけることが難しい」、「イラストを描くことが苦手なので、誰か作ってくれる人はいないだろうか」という声があり、「社内クラファン」を活用し、このプロジェクトを立ち上げました。

 当プロジェクトでは、イラストを描くことが得意な従業員などがメンバーになって、イラストを共有できる仕組みを構築しました。この取り組みにより、イラストを描くことが苦手な従業員や時間に余裕のない従業員なども手軽にイラストを使うことができ、効率的に業務を進めることができます。

 プロジェクトには、多くの部署から世代も違う、多様なメンバーが集まっています。それぞれがデザインに対する思い入れがあるので、ミーティングでは「AIを活用して、何かできないかな」など、デザインについて自由に話し合いながら、活発にプロジェクトを進めています。

 メンバー全員がそれぞれ所属する部署の業務がありますが、お互いに気兼ねなく話ができる雰囲気で楽しくプロジェクトに取り組んでいます。

【アワデザのメンバー】
・武田俊輔 コンサルティング事業部 上席コンサルタント
・枩田敬介 個人保険システム事業部 スペシャリスト
・西和田いつ子 保険プロダクト・サービス事業部 
・沖田奈津 システム運用事業部
・善本早紀 個人保険システム事業部
・井川知美 個人保険システム事業部

(2)どのようなものを制作しているのですか。

 インターネット上にあるフリーイラスト共有サイトをイメージして、デザインを従業員内で共有できるwebサイト「アワデザ(OUR DESIGN)」を制作しました。例えば、社内の各部署には、社内情報などを発信しているデジタルサイネージ(電子看板)がありますが、各部署でスライドを用意することが負荷になることもあります。そこで、社内共通の連絡・案内に関しては、デザインを作成した部署がアワデザに投稿することで全部署でデザイン(スライド)を共有できるようにしました。

【サイネージの共有イメージ】
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 従業員が作成したオリジナルデザインも共有可能です。人物や動物などのオリジナルイラストが多数投稿されていて、社内資料であればダウンロードして使用できるようになっています。

 例えば、個人保険システム事業部には、「こしすん」(名前は個人保険システムを略したものです)というキャラクターがいるのですが、これは従業員がアワデザに投稿したオリジナルキャラクターです。

 現在では、生成AIを利用していろいろなポーズの「こしすん」が誕生し、共有されています。共有された「こしすん」は、部のキックオフ資料に使われるなど個人保険システム事業部のいろいろな資料に登場しています。

 イラストには、それぞれ複数のキーワードやカテゴリーなどを設定していて、簡単に検索できるようにしていますし、利用してもらえるよう、適宜、使いやすさに改良を加えています。
また、使用頻度が高いものなどユーザーがお気に入りのイラストを、画像ファイルとしてダウンロードしておくことも可能です。

(3)運用面や開発面で重要視していることは何ですか。

 イラストを多人数間で共有・使用する場合、自由に使用できるのか、使用範囲は限定されるのかといった著作権に関する注意が必要になりますので、法務部と協議して、使用要件を明示したマニュアルなどを作成しました。特に、生成AIで作成した画像も共有の対象としたかったため、生成AIの成果物の取り扱いについては重点的に協議しました。

 著作物の無断使用や生成AIの不適切使用をチェックできるようシステム面でもフォローしています。イラストを投稿する際には、生成AI利用に関する確認事項の表示や、利用制限のある一般サイト素材が使われていないかをチェックを必須化したりすることで、問題の発生を未然に防止する工夫をしました。また、投稿されているデザインに問題があればユーザー側から「OUR DESIGN」プロジェクトメンバーに情報が届くように、通知機能も整備しています。

 著作物の二次利用に際しては、しっかりとルールを周知することが重要です。利用しやすいからこそ、不注意で使ってしまうことがありますので、問題とならないよう取り組んでいきたいと思っています。

 【チェック機能のイメージ】
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 また、多くの従業員に使ってもらうためには、「OUR DESIGN」の認知度を高めていく必要がありますので、「OUR DESIGN」でデザインコンペを開催するなどの活用の場面を増やし、認知度を高める活動ができないか、考えているところです。

(4)「OUR DESIGN」のプロジェクトに参加して、どうでしたか。

 何もない、ゼロからスタートして「OUR DESIGN」を作り上げたときの達成感は大きかったです。

 「OUR DESIGN」のメンバーは、とても安心感があります。困ったときに何でも気兼ねなく話ができ、いつも楽しい仲間です。

 デザインを考える時間がない、うまく作れるか不安といった声に応え、従業員全員が自由に使える、「OUR DESIGN」のイラストがさらに役に立つよう、成長させたいと思っています。

 このプロジェクトを通して、異なる部署の従業員との関わりを持てるようになることも「社内クラファン」の良いところだと考えています。

 今まで、あまり意識していなかった、たとえば、コンプライアンスや著作権に関する知識を「OUR DESIGN」で得られましたし、よい経験となりました。自分でもスキルアップしたと感じており、自部署の業務にもここで得られた知識やスキルを活用できていると思います。

 社内資料に私たちのイラストが使われていたり、「デザインが可愛い」という声を聞くと、プロジェクトに参加してよかったと思います。多くの従業員に活用してもらえたらうれしいです。

【きんたいりんく】

図

(1)「きんたいりんく」とはどのような取り組みですか。

 弊社内には、従業員の勤怠に関わるシステムが3つ存在します。人事部が管理する勤怠管理システムと、従業員がテレワークか出勤か等、その日の行動を誰でも確認できるシステム、そして、Outlook予定表です。3つのシステムに、同じような情報を入力する必要がありますので、従業員は、入力負荷を感じています。

 こういった情報の入力を簡略化できないかという声から立ち上げたプロジェクトが「きんたいりんく」です。従業員の勤怠に関する同一の情報を1回の入力とすることで、従業員の負担感を軽減することができますし、3つのシステムに何度も入力せずに済むことで、業務の効率化にもつながるものと考えています。

図

(2)実際にどのように勤怠管理を一つにまとめるのでしょうか。

 私たちが選んだ手法は、「RPA(Robotic Process Automation)」です。RPAとは、人がパソコンで行っている「単純で繰り返しの作業」を、ソフトウェアロボットに学習させて自動で行わせる仕組みです。3つのシステムへの入力手順が整理できれば、プログラムを組んで自動で行わせることができる内容だと判断しました。

 また、RPAとしては、「Selenium」というツールを選択しました。Seleniumとは、プログラミングによって指示することで、「人がブラウザを操作する手順」をそのまま再現できる仕組みです。ただし、どこをどうしてほしいかという細かい部分についてはプログラミングによって指示をしていく必要があります。

 つまり、人がブラウザを操作する手順を自動で行わせるためのツールを作って、勤怠管理の入力をひとつにまとめようとしています。そのツールを一度ダブルクリックで起動すれば、しばらく放置しておくと作業が完了しているイメージです。

 しかし、それぞれのシステムから得られる情報のすべてが取り込めるわけではありません。会社の勤務管理システムは、関係者または当人のみが確認できる仕様であり、休暇理由などのセンシティブ情報も含まれているため、取り込む情報を絞り、勤務管理システムから他のシステムへ連動する過程で、他の人が見ても問題ない内容に変換することにしました。

【きんたいりんくツールの仕組み】
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(3)開発を進めていくうえで、どんな課題がありますか。

 一番は、システム開発規模が思っていたよりも大きくなってきたため、3人ではとてもプログラミングが大変だということです。今後、他にも参加者を集めたいと思っています。また、弊社は業務上の制約も大きいため、社内の共有ツールとして運用可能なものとするためにはどのようにすればよいのか、他のシステムに悪影響を及ぼさないようどこに注意すべきか、といった点を重視しながら開発をすすめています。

 さらに、「きんたいりんく」と連動するシステムの仕様やブラウザのバージョンが変更となった際に、「きんたいりんく」のメンテナンスが必要となる場合もあります。

 「きんたいりんく」は、一度作って終わりではなく、連携するシステムにあわせ、継続した対応が必要となると考えています。そのため、社内クラファンとしてのいわばボランティアのような形ではなく、きちんとしたメンテナンス体制を組んでもらえるようなプロジェクトになるよう認めてもらうこともひとつの課題になると考えています。

 社内クラファンの成果発表会でいただいた、参加者からの「自動で行われるスケジュール入力には魅力を感じる」「この機能はいいね」「この部分をもっと改良してくれると助かる」といった声に応えられるよう早く実現したいと思っています。

(4)「きんたいりんく」のプロジェクトに参加して、どうでしたか。

 メンバー3人ともに所属部署の業務で多忙な中ですが、毎週決まった時間にオンラインでつながりながら、各自、黙々と作業をすすめる場、「もくもく会」を設けています。

 一人では調べきれないことや、わからないことがあれば、メンバー同士で確認しています。「もくもく会」を始めてからメンバーが一つの目標にむかって作業をすすめることで、連帯感が生まれるとともに、作業効率が上がりました。メンバーのモチベーションは高く、「やりたいこと」を最後までやり切り、「きんたいりんく」のツールを完成させることが私たちの目標です。

 ただし、本業優先とする点は、メンバー間の共通認識です。所属部署には繁忙期があり、個々の事情も異なるため、集まりへの参加を無理に求めることはありません。互いにメンバーをフォローし合いながら、活動をすすめています。

 個人的には、部下を持った経験がない頃にこのプロジェクトのリーダーを務めることとなりましたが、この経験を通じて、プロジェクトのすすめ方など自ら考える力が身につき、現在の業務に活かされている感じています。また、チームの計画の作成やプレゼンテーションを担当するなどの経験を積んだことが、自身の成長につながったと感じています。さらに、他のメンバーが温かく見守り、支えてくれたことは自分にとって大きな励みとなりました。

 「きんたいりんく」に限らず、社内クラファンでは、所属部署の業務だけでは出会うことがない従業員とプロジェクトに参加できます。ベテランの職員ともフラットに話せることなど、人脈を広げながら知識やスキルを習得できたことが自分にとって大きな財産になったと思っています。

3.「社内クラファン」の今後について

(1)社内クラファンを続けていくために留意していることは何ですか?

 まずは、取り組んだプロジェクトで「とりあえず作って終わり」というのでは意味がありません。何をもってプロジェクトの成果とするのか、それをどの部署が採用し、最終的にどのように事業化していくのかということが重要です。事業化の採用にあたっては、審査基準を明確にしておくことや、採用・予算化の意思決定権者である役員が審査に関わり、事業化を検討することも必要となってきます。

 また、あまり負荷をかけすぎると継続が難しくなるほか、個々の参加者のスキルに差が大きいとチーム内での担務に偏りが生じてしまうため、役割分担やスキルアップトレーニングの実施等を通じて、レベルの底上げも必要となってきます。

 はじめから大きなプロジェクトを立ち上げるのではなく、小さなテーマで成功体験を積み重ね、成功事例を増やしていくことで、社内クラファンを継続する価値が見いだせると考えています。

(2)社内クラファンの今後の展望についてお聞かせください

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 社内クラファンは、当社の従業員の強みである『高度なSIシステム開発能力』、『技術への旺盛な学習意欲』、『高いコンプライアンス意識等』を活かした取り組みに発展してきました。他者へ貢献するGiveの精神や心理的安全性が確保された中で、多様なアイデアが具体的な成果へと結びついています。

 今後はこの土壌をさらに活かすべく、AIの安全な利用環境やデータ利活用基盤の整備等を加速させ、挑戦しやすい環境につくっていきます。加えて、働きがい表彰など経営層による支援で後押しします。これらの施策を通じて、最終的には働く人のウェルビーイング向上に繋がる価値を社内外へ広く提供し続ける、持続可能な取り組みへと発展させてまいります。

~この企画は、ニッセイ情報テクノロジー株式会社様にご協力をいただきました。ありがとうございました。~