Web 共済と保険2026年6月号
率先して仕事がしたくなる魅力ある組織づくり
~「社内クラウドファンディング」を活用した事例~(上)
働きやすい職場環境の整備とともに、従業員のモチベーション向上にむけた取り組みは、企業や団体の持続的な成長には不可欠なものとなっています。従業員が働きがいを感じることで、自主的な行動や創造的な提案が増え、業績向上につながります。また、生き生きとした働きが、質の高い顧客満足度をもたらすといわれています。
ニッセイ情報テクノロジーでは、会社からの「自身の働きがい向上のために何をするのか」という問いかけに対する従業員からの回答で始まった「社内クラウドファンディング」(以下、「社内クラファン」)という仕組みを取り入れています。実際にどのような仕組みで、どんな活動しているのか、同社スマートワーク推進部と社内クラファン参加のみなさんにお話を聞きしました。
本記事は、今号と次号(7月号)でお届けします。
1.社内クラウドファンディングとは?
(1)社内クラウドファンディングとは、どのようなものですか?

「クラウドファンディング」というと、一般的には、資金を調達したい人が、主にインターネットを通じて不特定多数の人から支援を受ける仕組みですが、「社内クラファン」は、自分たちが主役になって会社や社会に貢献できる場であり、社内の横断的な課題の解決や「『自分がやりたいこと』にチャレンジしたい」という従業員を支援する仕組みです。
一人ではできないことも、部署の垣根を越えて共感して集まったメンバーが、一つの目的(プロジェクト)に対してそれぞれの「時間」「知識」「スキル」を提供し、取り組むことで成果が得られます。
社内クラファンに参加している従業員の上長、同僚、部下やプロジェクトに直接参加していない従業員もプロジェクトや参加者を応援することができる仕組みがあり、従業員それぞれが自分に合った形でプロジェクトに関わることができます。

(2)社内クラファンの取り組みが始まったきっかけは何ですか?
社内の満足度調査で、「あなたの会社の働きがいをより高めるために、改善の権限が与えられ、何かひとつできるとすれば、あなたは何をしますか?」という設問に対して、以下のような意欲的な回答が寄せられました。
●「新しいことにチャレンジする機会が欲しい」
●「自分が持てるスキルを発揮する場を欲しい」
●「今の役割にとらわれず、もっと違う役割を担ってみたい」
●「新しく一歩踏み出したい」
従業員は所属部署で与えられた役割を果たすことが業務の中心となりますので、従業員には「自分たちの作業環境を良くしたい」という思いがありつつも、顧客の要望に応えることを最優先に考えてしまい、社内の課題に対して「良くしたい」の優先度は低くなる傾向があります。また、所属部署だけで解決できないことは「できないこと」という先入観もあり、「業務推進において従業員自身が欲しかったものを作る」「所属部署だけでは実現できないものを作る」といった「やってみたい」を実現する機会があまりありませんでした。
従業員のこうした声に、経営層も「会社をより良くしていくことが自身の働きがいだ」という"熱い"従業員がいることに気づき、現場の思いが経営層に通じたことで、2023年に「社内クラファン」が立ち上がりました。
さらに、「社内クラファン」には、従業員の声に応えられるよう、「Be Open(オープン)・Go Bold(大胆に)・Agility(機敏に)」という3つの大切な価値観があります。
「社内クラファン」という仕組みができたことによって、従業員が「できないこと」と思っていたことに堂々と「やりたいこと」として取り組めるようになり、従業員の意識が変わってきたと考えています。
(3)社内クラファンにはどのような従業員が参加されているのですか?
社内クラファンは、春と秋の年に2回、従業員の「やりたいこと」を募集しています。プロジェクトの取り組み期間に決まりはなく、短期もあれば3年程度継続しているものもあります。また、各プロジェクトの人数は、5名程度としていますが、人数制限は設けていません。
社内クラファンのメリットは、所属部署の異なるプロジェクトメンバーが協力しながら「やりたいこと」に取り組めることだと思います。所属部署から一歩踏み出して社内のネットワークを広げることで、知見や業務の幅も広がり、スキルアップできることは従業員にとって大きなメリットとなります。
従業員が、「あったら便利なのに」と感じるツール、特に仕組みや制度などが多いです。毎年4~5月に「どんなことに困っていますか」「どういうことを課題に感じていますか」という内容のアンケートを取っています。その中から、会社にとって重要な意見や提案をピックアップし、回答者本人に詳細な内容を聴取したうえでプロジェクト化の可否を判断しています。
どこの部門とタッグを組めば、その課題が解決できるのか、課題解決の難易度は様々ですが、課題ごとにオリエンテーションを開催して、プロジェクトに参加を希望する従業員を募集しています。
高いスキルをもった従業員から、「プロジェクトにチャレンジするためのスキルは持っていないが、学びたいから参加させてほしい」という従業員まで参加者のレベルはさまざまですが、上級者が初心者をフォローするなどして、プロジェクトチーム全体がスキルアップできる仕組みになっています。
また、プロジェクトメンバーを「プレーヤー」と呼んで登録していますが、「そのプロジェクトに興味があるので時間ができた時には参加したい」という従業員も「プレーヤー」として登録する人材バンクのような仕組みがあります。2025年度はプレーヤーとして66名の登録があり、10名がアクティブプレーヤーとしてプロジェクトに参加しています。
(4)社内クラファンによってどのような効果が期待できますか?
社内クラファンは、従業員の「やってみたい」を実現するなかで、以下の①から⑤のような効果があります。また、成果物を披露する社内発表会などを開催することで、イノベーション創出・人材育成・組織活性化など多くの効果が期待できます。

<社内クラファンで得られる主な効果>
①イノベーション創出の加速
●多様なバックグラウンドの参加者が取り組むことで、通常業務では出にくいアイデアが生まれる。
●制約のない場で発想するため、既存の枠組みにとらわれないソリューションが出やすい。
②従業員のエンゲージメントの向上
●一緒に手を動かして成果物を作る経験が、チームの一体感を高める。
●自分のアイデアが形になる成功体験が、当事者意識やモチベーションを高める。
③技術力・問題解決力の向上
●新しい技術やツールに短期間で触れるため、スキルの底上げが期待できる。
●業務課題を「分解 → 解決 → 実装」と進める経験が、実務にも活きる。
④部門間の横断コミュニケーションの活性化
●普段関わらない部署のメンバーとの協働により、新しいネットワークが構築される。
●課題やアイデアの共有を通して、組織全体の視座が高まる。
⑤PoC(概念実証)の迅速化
●まず試してみる文化を醸成し、企画や技術の「初速」を高める。
●短期間でプロトタイプを作るため、実現可能性・価値の早期検証ができる。
(5)社内クラファンのプロジェクトに参加することで従業員が得られるものは何ですか?
プロジェクトに参加することで、「やりたいことが認められるうれしさ」や「社内ネットワークの広がり」、そして「スキルアップ」を実感することができます。他の従業員の「やりたいこと」を知ることができること、共感することで自分たちも応援したいという気持ちが高まり、他部署との協力関係を築くこともできます。
また、プロジェクトの成果については、上司や先輩など、取り組みを披露したい従業員にも参加してもらい、発表会を開催しています。プロジェクトメンバーの認知度や評価が高まり、所属部署以外へ活躍の場が広がっていくことも期待できます。
~次号では、実際に取り組んでいる社内クラファンの事例と今後の社内クラファン活動についてお届けします~
(7月号へ続く)





