Web 共済と保険2026年5月号
協同組合共済と持続可能な未来 ―2025国際協同組合年を終えて
はじめに
2025国際協同組合年を迎えるにあたり、わが国の実行委員会は、持続可能で活力ある地域社会の実現に資することを目指して、「協同組合に対する理解を促進し、認知度を高める」という活動目標を設定し、「全国の協同組合組織に対し、学び、実践し、発信することを呼びかけ、これを支援」する活動を行いました。
これを踏まえ、筆者は、「共済と保険」2025年1・2月号に掲載された「2回目の国際協同組合年に向けて―認知度向上と共済事業」において、共済事業を行う協同組合に期待される取り組みとして、次の点を指摘しました。
| ① 協同組合が貢献できる理由を整理し、発信すること ② 実施する共済種類や地域貢献活動の違い・特徴を踏まえ、各団体がそれぞれの認知度の向上に取り組むこと ③ 組合員への保障の提供・提案そのものに公益性があり、社会的役割を果たしていることを、協同組合自身が認識し、対外的にも発信すること ④ 2026年以降にも継続されるべき認知度向上の取り組みに向けて、質の高い学習・発信の契機とすること |
共済事業を行う各協同組合が、2025年に、実行委員会の呼びかけ・支援を受けて、これら①~④を含めてどのように学び、実践し、発信したか、どのような成果があったかについては、2026年3月24日に実行委員会において総括が行われたほか、今後、各協同組合のウェブサイトやディスクロージャー誌において明らかにされ、また、協同組合の認知度や評価に関する調査が行われれば、その結果にも反映されることになるでしょう。
『Web 共済と保険』2026年4月号に掲載された「2025国際協同組合年の振り返りと次の10年に向けて」によれば、実行委員会が掲げた活動目標を1年間で達成することは難しく、特に国際協同組合年に対する協同組合の組合員・役職員の認識や協同組合の外部への発信については課題が残ったとの見解も示されています。
地域社会と向き合う協同組合
国連が2012年および2025年を国際協同組合年と定めて、協同組合の振興を促した背景にあったのは、地球環境や私たちの社会の持続可能性に対する強い危機感です。
そして、協同組合は、社会・経済の発展と課題解決に貢献できる事業体として、SDGs(持続可能な開発目標)に取り組む主体として、さらに、限界を迎えつつある新自由主義に替わるべき社会理念である「社会的連帯経済」の主要な担い手として、期待されています。
わが国においては、東日本大震災以降、災害からの復興に協同組合が果たし得る役割が認識され、2021年にJCA(日本協同組合連携機構)は、2030年までに「成長・競争一辺倒とも言えるいまの社会を持続可能な地域社会の実現へ転換する」ことを目指す「JCA2030ビジョン」を策定し、その実現に向けて取り組んでいます。
2027年以降に向けて、ICA(国際協同組合同盟)は、「協同組合のアイデンティティに関する声明」(1995年)を改定し、持続可能な地域社会を実現するため、協同組合がより積極的に関与していくべきであるという指針を示すことを検討しています。
これまで長く「組合員への奉仕」のためとして事業・活動を重ねてきた協同組合が、「持続可能な地域社会づくり」に取り組んでいくという国内外の動きのなかにあることは、これからも、各協同組合の役職員・組合員に向けて、事業計画・活動方針や研修・広報を通じて働きかけを続け、これを「学び、実践し、発信する」という意識を保っていく必要があると考えられます。
協同組合共済の取り組み
共済事業を行う協同組合への期待として、本稿の冒頭で述べた①~④の取り組みについても、2026年以降、引き続き協同組合の役職員・組合員の認識を深め、外部に積極的に発信していく必要があります。
多くの組合員・地域住民にとって、共済への加入は個人(世帯)単位の出来事であり、それが自分の住む地域社会の持続的発展に役立っているという意識を持つことは容易ではありません。
万一の事故や災害による経済的破綻の不安なしに生活・生産・労働ができること、事業による収益が組合員・地域に還元されること、健康の増進や防災・事故防止について日頃から啓発する活動を行うこと等、共済事業を行う協同組合が地域社会において果たしている役割を明確に整理し、これを「学び、実践し、発信する」取り組みを続け、地域住民の方々にも認知していただくことを目指していく必要があります。
そして、この取り組みには、共済事業の機能・性格一般(保険会社との相違)を今日的に分析し整理するという視点と、各協同組合の保障内容や活動が地域において具体的に果たしている役割を整理し表現するという視点を組み合わせることが求められます。
こうした取り組みをすすめるうえでは、共済事業の研修・広報に関する新たな試みの事例を収集し共有することも有益であると考えられます。
特に、共済事業に関しては、2012国際協同組合年において、その前年に発生した東日本大震災からの復興に果たした協同組合の役割をわが国から発信することがテーマの1つとされた経緯もあり、自然災害に関する損害調査や防災に関する事柄だけが突出して語られる傾向がみられる点は、意識して修正する必要があります。
今後に向けて
先に述べたICAの「協同組合のアイデンティティに関する声明」の改定は、協同組合がいかに社会と向き合っていくべきかを、その役職員・組合員が「学び、実践し、発信する」ための絶好の機会になると考えられます。
現在、協同組合の第7原則の表題を「地域社会への関与」から「地域社会への参画」に改め、その内容も、単に「地域社会の持続可能な発展のために」と表現している箇所を、「事業を展開する地域社会の幸福と、すべての人のための平和で公正かつ環境的に持続可能な未来のために」という文章に改める案が検討されています。
このような新たなアイデンティティを、それぞれの協同組合が前向きに受け止め、今後の事業や活動に反映させ、地域社会への貢献に関する役職員・組合員の当事者意識を高めていくために、十分な情報提供や問題提起を行う準備を考えておくべきではないでしょうか。
その後、2030年には、SDGsの諸目標の達成期限が到来します。わが国の協同組合も、SDGsに関してどのような成果を挙げたか、どのような課題が残ったかを総括し、内外に発信することが求められることになるでしょう。
その成果を広く発信することを活動目標の一つとした2025国際協同組合年を終えた現在、適切な評価の視点や表現について検討し、各協同組合においてある程度共有しておくことは、今後残された5年間の取り組みを充実させるためにも、2030年において有意義な集約を行うためにも望ましいと考えられます。
さらに、2035年が3回目の国際協同組合年となり、その後10年ごとに国際協同組合年が設けられることが、国連において決定しています。SDGsの後、持続可能性がどの程度回復しているのか、国際社会においてSDGsを引き継ぐ議論や取り組みがどのように行われているのか、そのなかで協同組合に何が期待されているのか、予測することはできません。
しかし、2025年の時と違って、これから9年間、誰が何に取り組み、どのような準備をして、次の国際協同組合年を迎えることが望ましいかを構想する時間は与えられています。
2012年・2025年の経験を経て、協同組合間の連携の面で成果があったとすれば、それをどう定着・発展させるか、また、国際協同組合年に対する協同組合の組合員・役職員の認識や協同組合の外部への発信について課題が残ったとすれば、それをどう克服するか、そのような問題意識を失うことなく、それぞれの協同組合が今後の事業や活動の現場で、持続可能な地域社会づくりに向けた学び・実践・発信を積み重ねていくことが求められています。