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Web 共済と保険2026年4月号

2025国際協同組合年の振り返りと次の10年に向けて

日本協同組合連携機構(JCA) 代表理事専務
比嘉 政浩(ひが まさひろ)

※所属・役職は、執筆時点のものです。

 国際協同組合年(=International Year of Cooperatives=以下「IYC」)は、2025年末で終了しました。本原稿執筆は2026年2月ですが、掲載される頃には、JCAが事務局を務めたIYC2025全国実行委員会(以下「実行委」)の総括文書が、JCAのホームページに公開されていますので、正式な総括はそちらをご覧いただくようお願いします。

 ここでは、実行委の事務局の一人として、個人的な思いも含めてIYC2025を振り返ります。

IYCはチャンス

 2023年12月に国連本会議で採択された決議「社会開発における協同組合」のなかで、2025年をIYCとするとされ、同決議に日本も賛成しました。同決議は、協同組合に対する具体的な期待を数多く示したうえ、「すべての加盟国は、協同組合を振興(英文ではpromote)し、SDGsと社会・経済開発全体に対する協同組合の貢献についての認知を高める方法として、IYCの活用を促す」としました。

 協同組合関係者は常に協同組合に対する理解を広げたいと考えています。IYCにあたっては、国連からのメッセージも期待できます(現に国連事務総長の動画が公開)し、国連決議に賛成した日本政府も動かざるを得ない(最大の動きは後述の国会決議ですが、各省庁のホームページや白書への掲載もありました)ことから、チャンスと捉えることができます。なお、「チャンス」という言葉の含意として、「自ら動けば成果に結びつく」が、「何もしなければ成果なく終わる」ものと理解すべきと感じてきました。

IYC2025全国実行委員会の活動

 実行委は、「持続可能で活力ある地域社会の実現に資する」ことを目指し、協同組合に対する理解促進、認知度向上、SDGs達成への貢献などを目標に掲げて活動しました。
 以下、主な活動をご紹介します。

"協同"がよりよい世界を築く~連続シンポジウム・座談会

 社会が抱える特定の課題を起点に、各協同組合の実践状況を報告し、今後協同組合が尽力すべき方向を見出す、という形で開催しました。延べ約2,600人の参加を得て、動画視聴回数も3,000回を超えています。テーマは以下の通りです。いずれもJCAのホームページで報告書、動画をご覧いただくことができます。

"協同"がよりよい世界を築く~連続シンポジウム・座談会のテーマ
第1回 協同組合と国際協力
第2回 協同組合とディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)
第3回 環境と調和のとれた食料・農林水産業の確立
第4回 SDGsと協同組合
(第1部)実践状況、達成への課題と期待
(第2部)持続可能な暮らしのために、先人から学び、未来へつなぐ~協同組合の父 賀川豊彦とSDGs~
第5回 防災・減災・生活再建と地域づくりへの貢献
第6回 こども・若い世代が主役の社会をめざして~みんなで育てる未来~
第7回 食料安全保障をめぐる状況と協同組合が果たすべき役割
第8回 地域の未来を共創する協同組合のジェンダー平等
第9回 暮らしを支える医療・福祉

 各協同組合グループの実践が相互に共有されたことは大きな成果でした。私自身も、各協同組合の実践に尊敬を覚え、感銘を受けました。これが組合員レベルにまで広がれば、協同組合に対する理解促進に大きく貢献すると思います。

 なお、諸課題を起点にすることで協同組合関係者以外の方々の参加も期待しましたが、協同組合役職員の参加が中心で、外部への発信には課題が残りました。

 一方で、これらのシンポジウムに参加したNPO法人が、協同組合の実践を高く評価し、自らが主催するフォーラム等にJCAが招かれ協同組合の実践を報告する機会がありました。「外部への発信」という意味ではとても効果があったと思います。今後「出向いて発信する」ことを重視すべきと考えています。

シンポジウムの風景
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出典:JCAウェブサイト

大学における協同組合論講座等の拡大に向けて

 県域の協同組合連携組織が、大学と連携し、協同組合論等の講座を提供する事例は全国で17大学に及びます。一般に寄付講座というと大学への相応の金額の提供が前提となりますが、これらの講座において金銭の授受はありません。

 講座の内容はさまざまですが、各協同組合の役職員が順次登壇して自組織の活動報告や、視察を受け入れるなどして大学に協力しています。JCAも首都圏5大学で実施しています。

 こうした活動は、大学生による協同組合への理解促進に効果がありますし、就職先の選択肢として意識してもらうことも期待できます。実行委は「協同組合教育について―IYC2025大学寄付講座等拡大にむけたシンポジウム―」を2度開催し、その結果、2026年度から新たに2大学で開講します。

見て、聞いて、体験 協同組合フェスティバル

 7月の第一土曜日は国連が定めた国際協同組合デーです。例年、協同組合全国組織は記念中央集会を開催してきました。しかし、この集会は協同組合役職員が会するもので外部への発信効果は乏しいものでした。

 そこでIYC2025においては、どなたでも参加できる「見て、聞いて、体験 協同組合フェスティバル」を開催し、協同組合クイズなどのステージ企画、各協同組合によるブース出展、物販などを行い、4,000人の参加がありました。楽しみながら協同組合を学ぶ機会を提供することができました。

見て、聞いて、体験 協同組合フェスティバル(2025年7月5日開催)
図

出典:JCAウェブサイト

「国際協同組合年に当たり協同組合の振興を図る決議」を衆参両院で実現

 実行委は超党派の国会議員で構成される「協同組合振興研究議員連盟」に対し、「国際協同組合年に当たり協同組合の振興を図る決議」を国会で採択するよう要請しました。同議連は同決議の実現に取り組むことを決め、同議連加入議員やJCA役職員が各議員に働きかけた結果、2025年5月、衆参両院で賛成多数(反対者は各院数名)で採択されました。

 同決議は、「政府は次の考え方により協同組合を振興すべき」とし、「協同組合のアイデンティティに関するICA声明に定める協同組合の定義、価値及び原則の尊重」「地域社会づくりに当たって有力な主体として協同組合を位置付けること」「民間非営利組織が果たし得る役割を重視し、協同組合の発展に留意すること」としました。

 両院および大多数の国会議員の意思が示されたことの意義はとても大きいです。しかし、国会決議に法的拘束力はありません。国会の意思として政府を縛るには法律を作るしかありません。

 そのため、ほとんどの協同組合グループの参加を得て、JCA内に「協同組合法制に関する実務者研究会」を設置しました。今後、協同組合基本法等の制定に向けてどのように取り組んでいくかについては、諸情勢を踏まえた慎重な検討が必要ですが、同研究会としては、相応しい協同組合基本法の要綱案をまとめることを目的に研究を進めます。

都道府県域においても

 実行委は、全国の協同組合組織に対し、「学び、実践して、発信しよう」とする行動提起を行いました。協同組合のアイデンティティに関するICA声明等を学習し、これに基づき実践して、協同組合に対する理解促進のために個々人も発信しよう、という提起です。学習資材や動画、展示用タペストリー、会話のきっかけとするため身につけるバッジ、シール、ストラップ、ノベルティ類を提供、販売しました。

 21の県域で、県IYC実行委員会が設置されましたし、設置されなかった県でも県域協同組合連携組織が中心になり活動しました。現在、42都道府県域に協同組合連携組織がありますが、IYC2025を契機に、新たに2県で協同組合連携組織を立ち上げることになりました。

 このことにより、協同組合連携組織を設置した都道府県は合計44となります。テレビCM、スマートフォンアプリを使用したスタンプラリー(各協同組合の施設訪問を促す仕組み)、クイズキャンペーン、IYC2025を冠したプロスポーツのゲーム、海ごみに関する学習と清掃、一般の方の参加も含めた協同組合施設の見学や講演会、映画上映会、協同組合まつりの開催など、多彩な活動が行われました。

 単位協同組合においてもIYC2025を学習・実践・発信、交流の機会として活かした多くの事例が寄せられています。

2025年を終えて

 実行委事務局機能の充実を期して、会員団体からさらに4名の出向者をJCAに迎えました。直接従事したJCA役職員はおよそ18カ月の間、本当に多忙な日々でした。そのおかげで、多くのシンポジウムや大規模な協同組合フェスティバルが開催でき、国会決議が実現したのです。心より感謝と敬意を表します。

 しかし、実行委が掲げた目標の達成に向けては、課題も残りました。とりわけ、協同組合の組合員、役職員の多くが、「今年はIYCであり情報発信・理解促進のチャンス」と受けとめていたか、協同組合に対する期待を受けとめ、実践しようとされたかというと、決してそうではなかったと言わざるを得ないと思います。

 さらに自ら厳しく言えば、協同組合の認知度向上など実行委が掲げた目標は一年間で達成できるものなのか、一年という期間ではIYCに大きな意義を見出すことは難しいのではないか、という見解も成り立つと思います。

実行委の計画は「後に残す」「変化の契機の年とする」を意識した

 実行委の計画策定の段階から、IYCはチャンスではあるが、終わりがあることを意識すべきだと考えていました。そして数年後に、2025年の実践や良い変化が今も続いている、IYC2025が今日の成果につながっている、そう言える種を作ることを意識していました。

 国際協同組合デー記念中央集会は協同組合の役職員が会する場から、外に向かって発信する場に変えました。来年度以降、同じ予算規模で実施することはできませんが、「外に発信する機会とする」ことは不可逆だと思っています。また、県域でも同様の方向でしょう。

 「課題を起点に」連続シンポジウム等を開催したのは、協同組合はそもそもそういう存在だからです。協同組合にとって事業方式の確立は必須ですが、そうなると、事業の意義がわかりにくくなり、慣性の法則に支配されかねません。これに抗するためには数多く開催されるシンポジウム等を「協同組合の事情」を起点にするのではなく、「課題起点」にすることが必要だと思います。今後そうした形が増えていくよう努力しますし、期待もしたいと思います。

 大学の協同組合論等の講座は、多くの場合、中・長期的に継続して開講しています。IYC2025を契機にスタートした講座をきっかけに、県内の主要組織に協同組合に対する理解者が増えたり、協同組合に就職する人が増えれば素晴らしいことです。

 シンポジウム等を通じて得た諸組織との関係は大切にしたいと思います。協同組合関係者が他組織の設けた場で発信することは効果が大きいと感じており、IYC2025 を契機に始まった「出向いて発信」をこれからも大事に育てたいと思います。

とりわけ・・・

 多くの組合員は、共済商品が自分にフィットしたから加入したい、コープの商品を買いたい、などの動機で協同組合に加入します。こうしたことは自然なことだと思います。

 しかし、協同組合はそこに留まらず、組合員に協同組合がめざすものを理解・共感いただいて、自ら動く主体になってほしい、と働きかけます。職員に対しては、自分の言葉でそうした働きかけができる存在であってほしいと願っています。このことは協同組合にとって永続的な課題なのだと思います。

国連は今後10年毎のIYCを決めた

 国連は今後10年毎にIYCを設けると決めました。他の国際年にこうした例はなく、異例なことです。

図

出典:ICAウェブサイト

 次回のIYCは2035年です。準備期間を十分にとって次のチャンスを迎えられることは、とても素晴らしいことです。チャンスを活かすためには、永続的な課題に向き合い続けるとともに、多くの方の共感が得られるような連続性のある提起と実践が必要だと考えています。

 JCAでは今、「IYC2025記念事業」として、全国の多くの協同組合が参加可能な新しい事業の立ち上げを模索しています。

 協同組合に大きな期待が寄せられていることは明確です。このことを自らの励みにしたいと思います。記念事業立ち上げの可否に関わらず、すべての協同組合関係者の皆様の、今後のご奮闘を祈念します。

以 上

2025国際協同組合年の振り返りと次の10年に向けて日本協同組合連携機構(JCA)代表理事専務比嘉政浩ひがまさひろ