協同組合と共済事業の発展をめざし、調査・研究、教育・研修、広報・出版活動のほか、共済相談所として苦情・紛争解決支援業務を行っています。
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協同組合は、どのような点で株式会社と違っているのですか?

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1.協同組合と株式会社の違いを理解するため、まず株式会社の特徴を見てみましょう。

(1)株式会社の事業の目的

 モノを生産する事業を例に説明しましょう。
 事業を始めるには、店舗、製造機械、原材料などを用意する必要がありお金が必要です。株式会社は、必要な資金を株式の発行という形で不特定多数の人たちからも調達することが可能です。
 お金を出す(株式を買う)側の立場からすると、その元手が無価値になることなく(株式会社の倒産など)、会社が利益を生み、利益の分配を受け、将来的に株式の価値が上昇して元手を上回ることを期待して、資金を提供し(株式を買い)ます。
 その会社が十分に利益を出せるかどうかが、お金を提供するかどうかの重要な判断のポイントとなりますので、会社にとっても利益を生み出すことが経営上最も重要な目的となります。
 株式会社は、社会(不特定多数の人たち)のニーズに応えた商品やサービスを提供することを通じて利益をあげるために、ひとびとが必要としているよりよい商品、サービスを生み出そうと、絶え間ない経営努力を続けています。

(2)株式会社の所有者はだれですか?経営する人は誰ですか?

 株式会社のお金を提供した人は株主と呼ばれ、株主がその株式会社の所有者となります。株主は、会社経営に関する重要事項(事業の基本方針、取締役の選任、利益の処分方法など)を決定する株主総会で、所有株式数に応じて株主に与えられる議決権を行使して、間接的に会社運営に参画することができます。
 一方、具体的な経営は、株主総会で選ばれた取締役で構成される取締役会において決定され、代表取締役を頂点とする取締役・管理職・従業員によって運営されています。
 このように、株主が株主総会で選出された少数の専門的経営者に実質上の経営をまかせている(お金を出している会社の所有者と経営者が分離している)状態を 「所有と経営の分離」 といいます。

2.では、協同組合は株式会社と何が違うのでしょうか。

(1)協同組合の事業の目的

 協同組合は、共通の目的をもった人たちが、その目的を達成するために組織した相互扶助組織です。協同組合がその目的に沿った事業を実施し、各組合員がこの事業を利用することによって、組合員の利益を増進する関係になります。
 例えば、ある商品を必要とする人たちが集まって、協同組合を設立したとします。
 株式会社と同様、事務所を借りる、機械や原材料を購入するなどお金が必要となり、協同組合を組織する人たちは必要なお金を出し合います。この協同組合は、組合員が必要とする商品を生産して、それを組合員のために提供することが事業の目的となります(組合員への直接奉仕)。なお、出し合ったお金のことを出資金と言い、お金を提供した人たちのことを組合員と言います。
 株式会社は、生産した商品を株主ではない人たちに販売して、そこから利益を生み出し、事業を通じて得た利益を株主に分配することが目的であり、そこに違いがあります。
 出資という点は同じであっても、直接協同組合の事業から商品やサービスが提供されることを目的とする出資と、株式会社の事業から得た利益の分配や株式価値上昇を目的とする出資とは相違があります。なお、協同組合の商品やサービスの提供を受けたい人は、出資金を支払って組合員になることが求められます。

(2)協同組合を経営する人は誰ですか?

 協同組合は、組合員全員が出資額に関わりなく一人1票の権利で組合の運営に参加し、組合の方針を決め、これを実践するという組合員による経営への直接参加が原則であり、株式会社と大きく異なります。
 なお、協同組合の組織が大きくなると、組合員全員を集めた総会(最高意思決定機関)は開催が困難となるため、代議員による総代会で組織経営に関する重要事項(事業の基本方針、役員の選任、剰余金の処分方法など)を決定するようになります。総(代)会で選出された役員と職員により事業運営がされる点では、株式会社に類似しています。

(3)営利を目的に事業を行ってはならないと法律にありますが、どういう意味ですか?

 一部の協同組合法には、「営利を目的としてその事業を行ってはならない」旨が定められています。
 「営利」とは、会社などがその事業によって利益をあげ、その利益を所有者(株式会社であれば株主)に分配することをいいます。
 したがって、協同組合が営利を目的としてその事業を行わないということは、事業によって利益をあげ、その利益を所有者(出資者)に分配することを主たる目的として事業を行わないということです。

(4)営利を目的にしないということは、赤字でもいいの?

 「営利を目的に事業を行ってはいけない」ということと、事業によって利益をあげてはいけないであるとか赤字を出してもいいということは結びつきません。
 事業活動(組合員が必要とする商品やサービスを提供すること)では、銀行から借りたお金に対して利息を支払う、水道光熱費を支払う、また、職員を雇っている場合は給与を支払う必要がありますので、これらの費用を組合員への商品・サービスの提供の対価として受け取る収入からまかなっていく必要があります。
 収入が支出を下回る赤字の状況が続くと、お金が不足して、継続的な事業運営が困難になります。健全な事業運営ができなければ、事業の継続を断念して協同組合を解散するとか、事業を継続するため組合員に追加的に出資をお願いする必要が生じてしまうかもしれません。
 したがって、営利を目的としない協同組合にとっても健全な経営を確保しつつ組合員のために実施する事業の成長発展を図るうえで、利益(剰余)は必要です。

(5)協同組合が実施する配当は営利目的になりませんか?

 株式会社の配当は、株式数に応じた「利益」の分配です。協同組合法では、組合員が事業を利用した分量に応じて配当する事業利用分量配当と、一定の範囲内において払込済出資額に応じて行う出資配当が認められています。

①事業利用分量配当
 協同組合が組合員へ商品・サービスを提供し、組合員は代金や手数料などの費用を協同組合に支払いますが、その費用が協同組合を運営するために必要な経費を上回り剰余金が生じた場合に、「いただき過ぎた部分をお返しするという趣旨」で配当されるものです。
 したがって、利益の分配ではなく、費用の一部と見なして税務上も費用(損金)として分類されます。そのため、配当は組合員の出資額に対してではなく、事業の利用額の多寡に応じて決められます。

②出資配当
 協同組合に認められている出資配当は、出資に対する「利息という趣旨」で、払込済出資額の年1割以内で配当するよう制限されています。

(6)まとめ

 協同組合が株式会社とどのように違うのかについて、これまで説明してきた内容をまとめたのが次の表です。
 協同組合は、共通の目的をもった組合員が自ら出資し、運営し、利用するという点で、株式会社における株主や顧客の関わり方とは異なる組織です。
 また、出資の額を問わず、一人1票の原則で民主的に運営される「人と人との結びつき」による組織であることも、協同組合の大きな特徴です。

  協同組合 株式会社
目的 組合員への商品・サービス等の提供を通じた組合員利益の増進、協同組合の発達を通じた国民経済の発展 社会への商品・サービス等の提供を通じた企業利益の追求、株主への配当、企業価値の向上
出資者 組合員 株主
利用者 組合員 不特定
運営主体 組合員 株主
運営方法 一人1票 一株1票